まだまだ予断を許さない、そして油断もできない状況続いておりますね。みなさま、本当にお疲れ様です。私もひっそりマスク装着生活を送っておりますが、昔、シャトルランで追い込む用にマスクつけてましたなぁとか思い出したり。
と、そんなことはさておきまして。今月は「こんなときだからこそ」との思いを込めまして、みなさまにぜひとも出逢っていただきたいコメディ作品&ギャグ作品から4作をご紹介させていただきますよ!
こうして特定ジャンルに絞って見せていただきますと、筆者さん各々の捻りや仕掛けに練り込まれた個性が味わえるものですね。みなさまもご存分にお召し上がりくださいましー。

ピックアップ

モブ騎士女子の狭くて広い日常譚

  • ★★★ Excellent!!!

騎士道物語を熱愛し、異世界転生物語に感化されたミリアーネは、自分も特別な力を持つ主人公なのではないかと信じて育ち、ついには騎士へと成り仰せた。が、前世の記憶を持たず、特別な力に目覚めもしないことから、彼女は現実を直視する。自分はモブキャラなのだと。あっさり死んでしまわないため、努めていかなければならないのだと。

そんな自覚から始まるミリアーネさんの物語、ジャンルとしては(女子騎士の)日常ものになるのですが――「モブキャラ」というキーワードが本当によく生かされているのが最大の特徴です。“モブだから”という展開があり、“モブだけど”という展開もある。モブという言葉の意味をひとつに絞らないことでキャラの個性を最大限に生かし、小さな日常話の幅をぐぐいと広げているのがすばらしいんですよ。

自覚系モブキャラが小さな努力を重ねて行き着くゴールはいったいどこなのか? 今後の更新が待ち遠しい一作です。

(「こんなときだからこそ笑いと元気!」4選/文=髙橋 剛)

普通の女子社員vsドM+友だち!

  • ★★★ Excellent!!!

平凡な会社員・清水詩絵子は、優秀さと厳格さに定評のある主任・向井帝人とお付き合いを開始。ひと月を経てついに大人の関係に……と思いきや、それはもう見事な土下座を決められ、告げられる。「どうか……どうか、僕を踏んでください!!」。

うん、やられました。Sじゃない詩絵子さんがドMのイケメン上司に見初められて大変なことになっていく過程が、「式」としてしっかり構成されていることにです。うまいんですよね、この式の構築を担う詩絵子さんの友人・美里さんの使いかたが。書き手の都合で置物になってしまいがちな“3人め”を猛烈に動かす筆はお見事のひと言です。
そしてそれは、美里さんの猛烈さに霞むことなく個性を際立たせる、詩絵子さんが主人公だからこそなのです。強く尖ったキャラをそろえることで逆に物語のバランスを取る、ここはぜひ注目していただきたいポイントですね。

式と答の関係性際立つキャラ小説、その妙味をどうぞお楽しみください!

(「こんなときだからこそ笑いと元気!」4選/文=髙橋 剛)

こんなときだからこそ安全に前向きに! 飲んで食べて記して応援!

  • ★★★ Excellent!!!

世界的パンデミックで厳しい状況に追い込まれた熊本の繁華街、下通。その中でテイクアウト商品を扱うようになったお店を巡り、味わいをお家から食レポする!

こちらのエッセイ、とにかく愛があるのですよ。熊本愛、店愛、酒愛、肴愛。匂い立つどころか噴き上げる勢いで。

そしてまた筆の味わいが深い! 買い求めてきた肴たちを口に入れてからの描写がとにかく濃やかで深いのです。ある話では料理の素材の味についてを突き詰めて思い、またある話では、肴をきっかけに回想へ浸り込む。ですので展開自体は各話様々なのですが、締めはもれなく叙情的で、これがまたまたいいのですよ。読み物として見れば読後感の演出として効いていますし、酒好きのレポとして見れば、ほろりと香る酒の余韻を感じられて。

まさに今こんなときだからこそ、酒気に乗せて綴った手記。みなさまにもお家で、著者さんの意気と愛を感じていただきたく思います!

(「こんなときだからこそ笑いと元気!」4選/文=髙橋 剛)

これはひとつの理想であり、未来の可能性であるかと!

  • ★★★ Excellent!!!

著者さん=出題者の提示した問題文を読んだ後、問いに答える長文読解! としか説明しようがないのですが……問題なのはまさに問題文です。“長”ならず“超”と謳われている通りに内容がぶっ飛んでいるのもそうですし、著者さんの思考や心情が盛り盛り過ぎるのもそうなんですけど、構造というか作品の有り様がすでに問題文、ひいては読み物をも超えているのです。

おもしろいもので、問題文になっていればこそ読む側は文章の意図、さらには著者さんご本人と真剣に向き合うこととなります。これって実は、すべての書き手さんが目ざす境地ですよね。形式という一点を整えたことで創作の理想を実現するなんて、実に興味深いですし、おもしろいじゃありませんか。フロンティアというものは常に、こうした発想の妙が拓いていくものです。

楽しさだけじゃなく、そんな可能性をも感じられる“テスト用紙”、問題内容にはなんとか触れずにおきましたので(難しかった!)、ぜひともご自身の目でお確かめをー!

(「こんなときだからこそ笑いと元気!」4選/文=髙橋 剛)