ホームズとルパン、明智小五郎と怪人二十面相、名探偵と怪盗の対決は古来より読者の心を魅了してきた。そしてミステリーは読者の頭脳に刺激的な快楽を与えてくれるジャンルだ。ときに戦前の日本では推理小説は三流小説と見下されていたといいます。しかし現代では小説の売上ランキングの上位が推理小説で独占している光景は珍しくない。面白いものは面白いのだ、時代の流れや常識は変わる。いま大衆に認められない作品も、いつか認められるかもしれない。そんな時代の変化への願いを込めて、今回は「探偵と怪盗」をテーマにした作品をピックアップしてみました。また今年一年よろしくおねがいします。
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異世界に召喚され、何故か『名探偵』という謎の職業についてしまった主人公トウマ。しかも彼の行く先々で殺人事件が起こり、犯人探しに駆り出されることに……。
異世界でちょっと変わったシチュエーションでの謎解きに挑戦するユニークなミステリーです。
『名探偵』はその名の通り謎を解き、事件を解決することでレベルが上がる特殊な職業。
異世界に召喚されるまでごく普通の一般人だったトウマに特別な推理力や観察力があるわけじゃない。けれども事件は向こうからやってくる。
貴族の美少女マリアを助手に、治安を守るピースメイカーと協力して、素人ながらも難事件を解明していくトウマの閃きに感心させられる。
魔王城で魔王が殺される「魔王が死んだ」。館の主が殺される「開けっぱなしの扉」。ダンジョンの奥で冒険者の死体が見つかる「棺のある死体」。怪物に襲われた死体が怪物に変わる「怪物の集う島」など、一風変わった事件の数々が興味深い。
解答編に入る前には推理小説でお約束の『読者への挑戦状』がある。みなさんも作者との知恵比べを楽しんでみてはいかがだろうか。
（「名探偵 VS 怪盗」４選／文＝愛咲優詩）
明戸高校に通う男子高校生・式十四郎は、専門的な知識を身に着けていたり、特別な訓練を受けていたり、ましてや名探偵の孫だったりもしない、ごく普通の少年だ。けれど論理力と観察力だけで数々の難事件を解決に導いてきた、天賦の才を持った高校生探偵だ。
クラスメイトの少女・榊刹那を助手に、舞い込む事件の謎を解き明かしながら、愛憎が絡み合う人間ドラマが胸を打つ。
館の主が殺されるミステリーの王道の殺人事件から、高校生カップルによる恋人殺人事件、バーチャルアイドルが配信中に放火される事件など、起こる事件はイマドキの若者らしい、現代の世相を表した身近なものが多いのが特徴。
そして事件の根底には、いつも男女の恋愛、友情、家族仲などの人間関係のすれ違いがあり、事件の謎とともに被害者、加害者の思いも晴らしてくれる。
「メイド探偵会」という面白ネーミングだが、実はシリアスで本格派なミステリーだ。むしろもっとメイドさんを出してくれ！
（「名探偵 VS 怪盗」４選／文＝愛咲優詩）
女子中学生の大宮千春が、身の回りで起こる事件の謎を解く名探偵として、そして事件の原因となる不思議な力を宿した遺産を回収する怪盗として活躍するストーリーが、夢とロマンに溢れていました。
幼少時より名探偵の祖父の教えを受けてパズルや謎解きが得意な千春は、素直で明るくてキュートな女の子。そして何より正義感に熱くて、他人のために行動できる、とっても格好良い女の子です。
遺産は異能力で持ち主の願いを叶えるが、人の心と結びつき、一歩間違えば持ち主の心を壊してしまう危険な代物。
遺産が起こす事件の真実を暴き、また遺産の犠牲者を救うのは大人でも困難なミッションだ。
最初は祖父の頼みから始まった遺産回収で、その危険性を目の当たりにして怖気づいてしまう千春でしたが、事件に巻き込まれた友人や大切な人を救うため、自分の意思で遺産と再び向き合う勇気に見惚れました。
本来は児童向けに書かれた作品だそうですが、大人も童心に返って胸踊らせる一作です。
（「名探偵 VS 怪盗」４選／文＝愛咲優詩）
