ここ最近の自分の中の重大トピックが、「『ストリートファイター/ザ・ムービー』本日公開」と「『忍空』と『NARUTO』のコラボアニメ発表」の二つに占められており、21世紀ももう1/4を消化したのに、あまりに価値観が90年代に囚われている……と我が事ながら震えております。
 自分もたまには真面目に最近の話題に触れて「現在のカクヨムはランキング掲載作にもAI利用の作品が散見され、そのことが必ずしも悪いとは言えないが、純粋に人間の手だけで書かれている作品が見つかりづらく/見つけづらくなったのは事実。単純な生産量でいえば人間よりAIが勝るのは当然で、今後ますますAIによって書かれた作品が存在感を増していくだろうが、それでは我々はいかにして人間が書いた面白い作品を探していくべきか……」みたいな話をしようかと思いましたが、それを語るにはこのスペースは狭すぎ、自身の中で明確な答えも出ていないし、そもそもこういうことを書いて良いコーナーじゃない気がするので、『忍空』では黄澄と黒楼が、『NARUTO』ではシカマルとシノが好きです、と言ってお茶を濁します。よく考えたら『忍空』の話をするコーナーではもっとないな……。
 というわけで、今回は新作特集である「カクヨム金のたまご」。いつも通りレビュアーが自分の眼で選りすぐった作品を紹介していますので、ぜひ皆様の小説探しの参考にしていただければ!

ピックアップ

平凡な高校生が手にしたスキルは、最強にして最凶!

  • ★★★ Excellent!!!

 ダンジョンが普通に存在する社会で、高校生の門田露澪が17歳の誕生日に引き当てたのは【一撃必死】(マストダイ)、攻撃を当てた相手が必ず死ぬという最強のスキルだった。ただし、一日の使用回数五回を使い切らねば、露澪自身が爆発して死ぬという最悪の条件がついていて……。

 こういうピーキーな能力をいかにして上手く使いこなすかが、この手の作品の醍醐味なのだが、本作の【一撃必死】はいくらなんでも使い勝手が悪すぎる。虫を叩くだけでも勝手に発動するし、喰らった相手はただ死ぬのではなくその場で大爆発。そして五回使い切らなければ死ぬ。つまり盆も正月も関係なく毎日五回大爆発を起こすことが人生で定められているのである。将来は安定の公務員になって安全に暮らしたいなどと考えてた露澪は、当然この力に振り回されまくる。

 自宅は爆散するし、有名探索者には目をかけられ、世界の秘密を知る猫の妖精を飼うことになり、安定安全とは遥かに縁遠い男となってしまった。それでもこのスキルを隠そうと何度も悪あがきに挑んでは空回りし、ペットのフランに容赦なくダメだしされる様子がたまらなくおかしい。彼が進む道は英雄か、それとも道化か? 最強のトリックスターとなった男の華麗なる活躍をとくとご覧あれ!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

元勇者と元魔王、二人は現在恋人関係

  • ★★★ Excellent!!!

 女子大生の勇木燈はマンションの隣の部屋に住む幼馴染・春賀耀と恋人関係にある。耀は自分が前世で勇者だったと思い込み、その経験を小説にして発表しているのだが、燈だけはそこに潜む誤りを知っている。実は燈の前世こそ勇者であり、耀はその勇者と戦っていた魔王だったのだ。空気を読んでそのことを表に出さずにいる燈だが、そんなある日、前世の自分と同じ顔を持った男が燈の前に現れ……!

 設定も特徴的なんですが、それ以上に百合カップルの生活感溢れる日常描写がめっちゃ良いんですよ! 初々しさとか一切なくて、代わりに遠慮のいらない関係性にどっぷり甘えているんだけど、一方で相手に正体を隠している不安なんかも見え隠れしていて、独自の距離感がめっちゃ上手に書かれています。

 それでいて物語がカップルの間だけで完結せずに、前世の仲間たちが突如姿を現れたり、様々な謎も浮上して、二人を巡るストーリーがどう転がっていくか予想がつかないのも大きな魅力。まだ始まって間もない物語ですので、気になった方は是非連載を追ってみてください!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

誰かの話を聞くだけなんて、楽な仕事に思えるでしょう?

  • ★★★ Excellent!!!

 本作の主人公、ナナシは副業として「レンタル聞くだけの人」を行っている。守秘義務を守ることを条件に相手の話を一方的に聞くだけのこの職業。需要があるのか怪しいと思いきや、他人に言いたくても言えない話を持っている人は意外といるようで盛況なのだとか。しかし、わざわざお金を払ってまで話を聞いてもらおうとするのだから、当然、中には普通だったら人には言えない怖い話や奇妙な話もあるようで……。

 というわけで、本作は各話ごとに様々な依頼人がナナシに自分の話を聞いてもらうという連作短編形式になっている。その内容は、地元で続く怪しい因習、ストーカー被害の相談、あるいは殺人の告白など実に様々。一見関係ない独立したエピソードがそれとなく繋がっている節があったり、物語が進むにつれてナナシの体調がどんどん悪化していったりと、派手さはないものの、じっとりとしたいやらしい怖さが付きまとう。

 そうしたホラーでありながらも、ナナシの元に来る依頼人たちがやたら個性的なこともあって、怖さと同時にどこかおかしみも味わえるのも大きな特徴。中でもなりゆきで飼われることになった猫のシロさんはとても愛らしく、怖い話を聞かされてざわめく心を癒してくれる。本編は20話に満たない分量で完結しているが、もっとこの世界に触れていたいと思わせる独特な雰囲気を持った一作だ。


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)

死を弄ばれた男は、死を支配する者へと生まれ変わる

  • ★★★ Excellent!!!

 生前は優れた騎士でありながら、死霊術師にその死体を掘り起こされアンデッドとして使役され続けた主人公。その偽りの生も討伐に現れた聖騎士によって無事絶たれることとなった。だが、彼の魂は再び生を受けることになる。それも今度は死霊術師の名門に転生して……!

 アンデッドから死霊術師への転換という設定がユニークな本作、幼いころから医学などの英才教育を受けたうえに、前世の経験も上乗せされて彼には死霊術師としての才能が溢れているのだが、アンデッドの苦しみを知っているだけに、家の掟をとことん拒もうとする。おかげで序盤はなかなか死霊術を使わず、あわやタイトル詐欺か……?と思わされるが、だからこそ彼が満を持して死霊術を使うシーンはそれまでの積み重ねもあって、とても熱い!

 物語の舞台がなかなか一所に落ち着かず、主人公の立場も舞台の変化に合わせて変遷するなど、章が進むにつれて大きく変化していく物語も大きな魅力。学園が舞台となる二章では、様々なタイプの死霊術師が登場するのが面白い。現在は紆余曲折を経て主人公がある大きな功績を挙げたところで第一部が完結しているが、各地で胎動する巨大勢力の名前が次々に挙がる最終話は今後のさらなる物語の激動を予感させる。

 現在は第二部を執筆中ということで更新が止まっているが、だからこそ未読の方にとっては今のうちに追いつくことをおススメしたい!


(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)