毎度どうもでございます。察していただける方はすでにお察しかと思いますが、今月も「ぜひみなさまに出逢っていただきたい作品」を選ばせていただきましたよー。
そして、書いてる時期が梅雨で蒸し暑いこともあるのですが、だったら逆に濃いネタを! とのテーマでお送りすることといたしました。こうしてみるとつくづく、濃さにもいろいろあるものですなぁと思うものです。それも投稿作の幅の広さがあってのものですね。
あと、どうでもいいことなんですが。いつもかるい感じでご紹介など書かせていただいているわたくし、作業中はずーっと苦虫を噛み潰したみたいな渋面だってこと、ここに告白しておきますね。ほら、真剣に集中しておりますのでね……

ピックアップ

おかしさの向こう側は……やばい深淵

  • ★★★ Excellent!!!

ゾンビをこよなく愛し、クラスメイトにも押しつけたあげく「ウェスカー」なんて呼ばれることになった11歳の少女、花宮あんず。塾の帰り夜道、彼女は変質者に襲われて、そしてある女性に救われる。――素肌にコートをはおっただけの痴女にして熱烈なあんずのストーカーである女性警察官に! かくてあんずと痴女の闘いが幕を開ける!

主人公のあんずさんからしてなかなかやばいです。そして作中で「痴女」と表記される女性警察官は深刻にやばいです。ついでに2話で登場するあんずさんのお友だちも酷くやばいんです。

マイナスにマイナスをかけるとプラスになりそうなものですが、そうはさせないのが著者さんの筆。基本的にはライトタッチでドタバタなのに、オブラードに包まないやばさが“迫力”になって、それが絶妙な後味の悪さを生む。文章という媒体ならではの錬金術が、これでもかってくらい味わえるのが最大の魅力なんです。

蒸し暑い夜にうってつけの、涼感系恋愛(?)小説です。

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)

この子を殺したのは誰だ!? 男子高生の魂が美少女の体を操って謎を追う!

  • ★★★ Excellent!!!

いつものように眠りへついたエルフの少女、ティアーナ ラフォリエットは突如、得体の知れない誰かに命を奪われた。そして男子らしからぬ名前を持つ高校生、糸麻宏実はトラックに轢かれて命を失った。気がつけば宏美はティアーナとなっていて、ティアーナは幽霊としてその傍らにいて……ふたりは協力し、ティアーナを殺した犯人捜しを開始する。

こちらの作品、簡単にまとめれば「異世界+ミステリ」ですね。とはいえ物語的にはまだ序盤ということもあり、宏美くんの異世界での慣れない(女子としての)生活がメインになってます。そしてね、それがなんとも細やかで濃やかなんですよ! なんとも男子らしい健全さ、いいですよねぇ。

しかもですよ、無事犯人が見つかって、ティアーナさんに体を返すことができたとしても、彼はすでに死んでるわけで。この「約束された最後」をどう描いていくかも楽しみです。

犯人は誰で、どんな理由からティアーナさんを殺したのか? 宏美くんはどうなっちゃうのか? いっしょに続きを待ちましょう!

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)

この髪に込めしは強者たる矜持

  • ★★★ Excellent!!!

忍である才造と頼也は髪を長く伸ばしている。ふたりを従える“長”は、その理由を問うた部下へ挑発だと語った。この長い髪ごと己が首を落としてみせよ――

311字という掌編で、俗に云う「三百字小説」に分類していいかと思うのですが、実に濃密です。

最大の特徴は、説明を極限まではぶいて抽象的な短文を連ねていること。それをもってキャッチーなテーマを明確に打ち出して1シーンを描き抜いているんですから、当然のごとく読者は集中して情景を想像することになります。そして結果的に、実際の文字数を遙かに超えるドラマを頭に描くわけですよ。

私などはよく“におい”などと言いますが、こうして一文を色濃くにおわせて広大な行間を演出してみせる作品、なかなか出逢えるものじゃありません。

量ならぬ濃を感じさせてくれる芳醇な311文字、ぐいっと推させていただきます。

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)

視ながら動く! 踏み台昇降式アニメ感想記!

  • ★★★ Excellent!!!

著者さんは気力や体力に自信を失くしつつあるお年頃。でも内臓脂肪的な問題で運動しなくちゃいけなくなった! というわけで、配信サイトで異世界転生系アニメ(24分)を見ている間、踏み台昇降機で有酸素運動しようと思い立つ。そうしてウェブ作家としての勉強も兼ねての運動生活が始まった!

なにがすごいかって言えば、発想がすごいですよね。テレビを見ながら~っていうのが一時期の健康器具の謳い文句だったものですが、それをきっちり実践してるわけですし。しかも異世界系アニメ4作品を1話ずつローテーションで見て感想をまとめつつ、その日の体重まで記載しちゃうこのライブ感! 隠せないから後には退けないっていう不退転な生き様、本当にアメイジングです。

しかしです。こうしたエッセイを拝見すると、赤裸々なところがおもしろいというだけじゃなく、しみじみ思い知るものです。「ネタに限りなし」ってことを。

エッセイ好きな方にももちろん、執筆活動している方も、見逃していただきたくない良ネタです!

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)