この髪に込めしは強者たる矜持

忍である才造と頼也は髪を長く伸ばしている。ふたりを従える“長”は、その理由を問うた部下へ挑発だと語った。この長い髪ごと己が首を落としてみせよ――

311字という掌編で、俗に云う「三百字小説」に分類していいかと思うのですが、実に濃密です。

最大の特徴は、説明を極限まではぶいて抽象的な短文を連ねていること。それをもってキャッチーなテーマを明確に打ち出して1シーンを描き抜いているんですから、当然のごとく読者は集中して情景を想像することになります。そして結果的に、実際の文字数を遙かに超えるドラマを頭に描くわけですよ。

私などはよく“におい”などと言いますが、こうして一文を色濃くにおわせて広大な行間を演出してみせる作品、なかなか出逢えるものじゃありません。

量ならぬ濃を感じさせてくれる芳醇な311文字、ぐいっと推させていただきます。

(「暑いからむしろ濃厚!!」4選/文=髙橋 剛)