今回はいろんな方向に「振り切ってるな!」と感じました4作をご紹介させていただきます。
と言っても、内容がきわっきわなわけではありません。なのに、ひとつのテーマや要素を突き詰めて振り切ると、驚くほど高品質なエッジを見せてくれるものなのです。こういう作品に当たるとうれしくなるのは、きっと私だけじゃないはず! ということで、ぜひみなさまもその妙にぶった斬られていただき、いろいろと刺激を受けていただきたく思いますー。
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浦島太郎の子孫である博士が打ち立てた「タイムトラベル理論」、それを実証する助手として選ばれた亀宮ほのかは、博士と共に発表の舞台に立つ。
「奇妙な味」と言えばかの江戸川乱歩さんの造語で、ひとつのジャンルじゃくくれない、不思議で割り切れない後味を残す物語を指すもの。
そしてこの作品は、その奇妙な味が書かれたものなのです。
本編の特徴ですが、浦島博士のタイムトラベル理論の極端さ、ほのかさんを襲う理不尽さ、その果てに来たる割り切れないエンディング――
各部を見届けた後に初めて、それらを繋ぐ構成の妙を味わわされる点ですね。
さらに、構造が理解できるとまたわかっちゃうんです。猛烈な後味の悪さに込められた必然性と説得力を!
ショートストーリーとは思えないほどの厚みがあって、ほんと、小憎らしいくらいうまいです!
この割り切れなさの極上、ぜひみなさまにも味わっていただきたいのでオススメさせていただきますー。
(スタイリッシュにフルスイング!尖ってるドラマ4選/文=髙橋 剛)
ツイッターのフォロワーさんからもたらされた「フリースタイルダンジョン」なるワード。
それを見た著者さんは首を傾げながらも盛り上がってるらしいってことで確認してみて……ハマっていくんです、韻を踏み踏みディスりディスられを繰り広げるラップバトルの世界へ!
すごいなと思うのは、著者さんがちゃんとドラマの主人公になってることなんです。
素人な著者さんが何気なく足を踏み入れたヒップホップの世界。そこで受けた衝撃や感動、解説が、ごく自然に読者の目に入ってくる。
言い換えれば読者目線で語られるんです。そしてまた心情描写がていねい! しっかり感情移入させてくれるところもまたすごい。
エッセイは「こんな見かた、感じかたがあるのか」を楽しむものが多いですが、こちらは物語さながら「著者さん=読者さん」っていう投影を楽しませてくれるのがなによりの魅力ですね。
ラッパーの方はもちろんですが、それ以上にヒップホップへご興味のない方におすすめさせていただきたく思います!
(スタイリッシュにフルスイング!尖ってるドラマ4選/文=髙橋 剛)
16世紀のドイツでその名を馳せたゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン――
大砲にぶっ飛ばされた右腕を鉄の義手に換えて生涯を戦い抜いた“鉄腕ゲッツ”の波瀾万丈を描いた作品がこれ!
まず驚くのはこの人が実在の騎士ってこと(ちなみにその義手も残されてます)。
フェーデ(私闘。主に決闘のこと)をこよなく愛し、宗教改革と宗教戦争に明け暮れる中世ドイツで大暴れしたゲッツさん。実際かなり問題ある人だったみたいですけど、著者さんは歴史の重厚さを醸し出しつつ、スカっと気持ちいいゲッツさんの姿を書き切ってくれてます。
この筆の思い切りのよさが、ゲッツさんの破天荒さを実に痛快な主人公として成立させて、延いては無比なる歴史エンタメへと高めてるんですよ。
読み終わると「こんな男がいたのか!」と思うことうけあい、さらには彼を取り巻く歴史まで知りたくなることまちがいなしの一作です。
(スタイリッシュにフルスイング!尖ってるドラマ4選/文=髙橋 剛)