小説は恋愛に似ている。読んでいる(つきあっている)間しか存在しない。そういうことで今回は恋愛というテーマになった、のではない。いよいよ寒くなってきたのでほっこりする話でも読みたいと思ったのである。その割に恋愛ジャンルから選ばないわ癖のある作品ばかりになるわ……。テーマを設定したものに代わってお詫びする。テーマを設定したのは私だった。『絶対好感度指数スキキライ』人の好感度が見える主人公によるいかにも恋愛っぽい作品だが、実際はいかにして恋愛から遠く離れられるかの探究だった。『秋心ちゃんの噂』ホラーの皮をかぶったミステリの皮をかぶったラブコメだが、単なる学園ラブコメというには巧すぎる。『おれはお前なんかになりたくなかった』これは恋愛ではなかった。だが、恋愛よりも強い秘密が、二人を有刺鉄線の絆で結びつけてしまった。もっと冷え冷えしたい人にもどうぞ。なお今回三本なのは、実は取り上げた作品の一本がちょうど12月1日からのコンテストに参加してしまったからだ。よかったらどの作品か探してみてください(無理)。

ピックアップ

好感度が見えても、理不尽な"物語"からは逃れられない

  • ★★★ Excellent!!!

主人公の雅継は他人の好感度を見ることができる。
これがさも大したことのないかのように冒頭から口上を述べ立てるのであるが、その前振り自体がかなり面白い。
「全く赤の他人なのになぜか異様に好感度が低い」相手は絡むと理不尽な危機に見舞われそうだ、などという説明からは、物語の始まる予感しかしない。

あくまでも説明のための例かと思いきや実際そういう人物がクラスにいて、問題はその人と同じ苗字の転校生が現れて、なぜか理不尽にも好感度120%だったりした場合である――。
好感度といえば『ときめきメモリアル』以来の恋愛シミュレーションにおける必須パラメータとも言えるが、むしろ本作はそれに翻弄されてしまう物語だ。

本当は周りの人間みんなが恋愛の関係者というわけではないのに、むしろこの能力があるばかりに、その磁場から逃れられなくなってしまう。
たとえば異性と友情を育むことはできるのか、という古い問題がここでも問われる。
高い好感度。それはLIKEなのかLOVEなのか。
むしろ雅継は、そんな問いの強制から逃れようとしているのである。

(寒い冬を暖める? 恋愛系3選/文=村上裕一)

暴力的なツンデレ後輩少女と、いちゃいちゃ怪奇をめぐる日々

  • ★★★ Excellent!!!

部長の火澄と毒舌後輩秋心からなるオカルト研究部の活動を描いた作品。
都市伝説的な噂話を聞きつけた部員2名がその検証に乗り出すというのがお話のテンプレだが、どちらかというとそれをネタにしていちゃつきを繰り広げているようで、ミステリの皮を被ったラブコメがホラージャンルにまぎれこんでしまったという感じである。

問題提起・調査・解明(ときどき後日談)という明確な三段構成で物語がきびきびと展開していて非常に読みやすい。
あまりにもさらさら読めるので見逃しそうになるが、火澄の個性的な一人称が非常に流麗で、暴力的なツンデレである秋心とのやりとりにニヤついてしまうことはもちろん、オカルト部などを含めた世界観や、一応の題材となる事件に関する情報が過不足なく伝わってくる。

読者は単なるラブコメを読んでいるつもりが、いつしか、なぜこのようなオカルト事件が起きるのかというようなという世界の謎をめぐる冒険に、そして、甘酸っぱいすれ違いを読んでいるつもりが、本心と本心が衝突するような局面に巻き込まれてしまうのである。

(寒い冬を暖める? 恋愛系3選/文=村上裕一)

彼を生贄に捧げて、彼女は救われる

  • ★★★ Excellent!!!

現代の「とりかへばや物語」である。というと大げさかもしれないが、小学6年生のミハルが入れ替わりを願い、出会い頭の衝突という典型的な展開から憧れの同級生フウタと身体を入れ替えてしまう。
もちろんこの構図に私たちは『君の名は』を思い出さないわけにはいかないのだが、あちらほどストレートで爽やかな方向性には行かない。

というのもこの作品では、入れ替わりを願うくらいだからミハルはつらい境遇にあったのであって、実は彼女は、学校で壮絶ないじめを受けていた。
それを中身が入れ替わったフウタが快調に解決していくのかといえば、全くそういうことにはならない。むしろその苦しみをひたすら肩代わりすることになり、そりゃあお前なんかになりたくなかったと言いたくもなる展開。

当然のようにミハルも元の身体には戻りたくないというわけだが、ミハルになったフウタが全く現状を変えられないまま苦しむ様子も含めて、ここには様々な意味でのリアルがある。

まだその物語の結末には達しておらず、どうかなんとかなってほしいと思わずにはいられない。

(寒い冬を暖める? 恋愛系3選/文=村上裕一)

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