今回は下読み目線は置き去りつつ、心に引っかかった作品を選ばせていただきましたよー。ええ、けしてネタ切れということでは、ない、のです、よ……?ですが。こうして見ると、やっぱりキャッチーで読みやすくてうまい、感慨を残す作品がそろいましたねぇ。すでに三つ子じゃありえませんけど、下読みの魂も百まで続くようです!ともあれ読者目線でも書き手目線でも楽しめることを保証させていただきますので、ぜひご一読あれです!

ピックアップ

思いを絶たれた少女が選んだのは、誰かの思いを彩る職人さん

  • ★★★ Excellent!!!

舞台はどこかの世界のどこかにある“花咲く都”。騎士を目ざしていたメルレーテ・ラプティは邪術師の呪いで剣を持つことができなくなった少女だ。
これ幸いと政略結婚を進め始めた家族に絶望し、家を飛び出して夜の街を駆ける中、彼女は運命との会合を果たす。運命の名は『ドールブティック茉莉花堂』。
彼女はドールドレス職人として、新しい自分の人生へ一歩踏み出した。

主人公のメルレーテさんはもちろんですけど、ブティックのお客さんもみんな乙女です!
ドールというものが持つ魅力や魔力、その粘土でできた体を飾るドレスの素敵さ、特別さがこれでもかと詰め込まれた、愛あるエピソード満載です!

読んでて思わずにやーりとしてしまいましたよ数十回。そしてこの作品、愛だけじゃあありません。
作者さんのやわらかな筆が情景をふんわり且つ精細に描き出してくれていて、実に想像がはかどるんですよねぇ。
恋の行方なども含めまして、最初から最後まで目が離せない一作です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

三蔵法師が成し遂げた偉業を三度も繰り返した文官がいた!

  • ★★★ Excellent!!!

唐の時代の中国に実在した文官、王玄策の天竺行を語る物語。
中国史にうとい方(主に私です!)にもぴんとくるポイントは、あの『西遊記』の三蔵法師が天竺行を成した直後から始まるお話だってことですね。

玄策さんは生涯の内、はっきりしてるだけで3回天竺行を達成してますけれども、この作品はその史実に基づきつつ情感に満ち満ちたドラマが散りばめられていて、引き込まれずにはいられませんでした。構成がお見事です。

このあたり、作者さんのキャラ立てがうまいのもポイントですね。
顔なんて知らないはずの玄策さんが、読んでると自動的に「とほほ」って感じで浮かび上がってくる感じ。
玄策さんだけじゃなくて、登場キャラ全員がすごく人間臭くて生き生きしてるんですよ。

固くなりがちな歴史ものをここまでやわらかく読ませてくれる作品、はっきり言って希少です! 普段歴史へ触れる機会のない方にもおすすめです。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

やさしくてうれしい冬の一夜

  • ★★★ Excellent!!!

クリスマスイヴ、受験生の少年の手に届いたのは他界した母からのメッセージカードだった!
そこに書きつけられた謎を解くべく、彼は冬の町へと飛び出していく。

日常の謎ジャンルの作品ですが、絶妙ですねぇ。章立てに加えて、ひとつの謎が次の謎へ繋がっていくリズムがすごくいいんですよ。
文章にもやっぱりリズムがあって読みやすくて、あっという間に10890字を読み切ってしまいました。
文章書きの方、この地の文はご確認いただく価値ありですよー。

しかもこのお話の謎、なんでもない一日だったはずの時間を一生忘れられないものに変えてしまう彩りがあるんです! 
読んでいる私たちも、読み終わった後で絶対に「よかったなー」と思えるあたたかさ。
なんでしょう、あったかいってよりむしろ爆発しろって感じですけどもね(ちょっとネタバレ)。
ともあれ。やさしくてうれしい冬の一夜をご堪能あれ!

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)