今回は下読み目線は置き去りつつ、心に引っかかった作品を選ばせていただきましたよー。ええ、けしてネタ切れということでは、ない、のです、よ……?ですが。こうして見ると、やっぱりキャッチーで読みやすくてうまい、感慨を残す作品がそろいましたねぇ。すでに三つ子じゃありえませんけど、下読みの魂も百まで続くようです!ともあれ読者目線でも書き手目線でも楽しめることを保証させていただきますので、ぜひご一読あれです!

ピックアップ

思いを絶たれた少女が選んだのは、誰かの思いを彩る職人さん

  • ★★★ Excellent!!!

舞台はどこかの世界のどこかにある“花咲く都”。騎士を目ざしていたメルレーテ・ラプティは邪術師の呪いで剣を持つことができなくなった少女だ。
これ幸いと政略結婚を進め始めた家族に絶望し、家を飛び出して夜の街を駆ける中、彼女は運命との会合を果たす。運命の名は『ドールブティック茉莉花堂』。
彼女はドールドレス職人として、新しい自分の人生へ一歩踏み出した。

主人公のメルレーテさんはもちろんですけど、ブティックのお客さんもみんな乙女です!
ドールというものが持つ魅力や魔力、その粘土でできた体を飾るドレスの素敵さ、特別さがこれでもかと詰め込まれた、愛あるエピソード満載です!

読んでて思わずにやーりとしてしまいましたよ数十回。そしてこの作品、愛だけじゃあありません。
作者さんのやわらかな筆が情景をふんわり且つ精細に描き出してくれていて、実に想像がはかどるんですよねぇ。
恋の行方なども含めまして、最初から最後まで目が離せない一作です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

ひとりの男が語る人生のワンシーン

  • ★★★ Excellent!!!

四十歳。それは医療保険に介護保険金が加算されるようになる「高齢」への入り口。
ということで、こちらのエッセイはその四十歳を半ばまで過ぎたという作者さんが心情を綴られたお話です。

人間、齢を重ねることでさまざまな「あるある」が発生するものなのですが、作者さんはそれに対するご自身の意見を、その年齢と現在置かれた状況とを併せて語っておられます。
これが等身大のご自身からの発言でありながら少しだけ強い気持ちを込めた願いも見えてきたりして、本当に趣深いんですよね。
同年代の方からすればまさに「ちょっと身につまされるあるある」で、下の世代の方なら「そんなこともあるのか」、上の世代の方であれば「そんなことも思ったものだ」になるのではないでしょうか。

誰の身にもいずれ当てはまり、いつか当てはまらなくなる不惑という時間。不思議なくらい感慨を呼び起こされる作品です。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

三蔵法師が成し遂げた偉業を三度も繰り返した文官がいた!

  • ★★★ Excellent!!!

唐の時代の中国に実在した文官、王玄策の天竺行を語る物語。
中国史にうとい方(主に私です!)にもぴんとくるポイントは、あの『西遊記』の三蔵法師が天竺行を成した直後から始まるお話だってことですね。

玄策さんは生涯の内、はっきりしてるだけで3回天竺行を達成してますけれども、この作品はその史実に基づきつつ情感に満ち満ちたドラマが散りばめられていて、引き込まれずにはいられませんでした。構成がお見事です。

このあたり、作者さんのキャラ立てがうまいのもポイントですね。
顔なんて知らないはずの玄策さんが、読んでると自動的に「とほほ」って感じで浮かび上がってくる感じ。
玄策さんだけじゃなくて、登場キャラ全員がすごく人間臭くて生き生きしてるんですよ。

固くなりがちな歴史ものをここまでやわらかく読ませてくれる作品、はっきり言って希少です! 普段歴史へ触れる機会のない方にもおすすめです。

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

やさしくてうれしい冬の一夜

  • ★★★ Excellent!!!

クリスマスイヴ、受験生の少年の手に届いたのは他界した母からのメッセージカードだった!
そこに書きつけられた謎を解くべく、彼は冬の町へと飛び出していく。

日常の謎ジャンルの作品ですが、絶妙ですねぇ。章立てに加えて、ひとつの謎が次の謎へ繋がっていくリズムがすごくいいんですよ。
文章にもやっぱりリズムがあって読みやすくて、あっという間に10890字を読み切ってしまいました。
文章書きの方、この地の文はご確認いただく価値ありですよー。

しかもこのお話の謎、なんでもない一日だったはずの時間を一生忘れられないものに変えてしまう彩りがあるんです! 
読んでいる私たちも、読み終わった後で絶対に「よかったなー」と思えるあたたかさ。
なんでしょう、あったかいってよりむしろ爆発しろって感じですけどもね(ちょっとネタバレ)。
ともあれ。やさしくてうれしい冬の一夜をご堪能あれ!

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

週末に始まって終末を迎える出逢いの物語

  • ★★★ Excellent!!!

月と同じほどの大きさを持つ隕石が落ちてきて、終末を迎えようとしている日本。
最後の最期、青年は公園で少女と出逢い、愛についてを語り合って恋をする。ただそれだけの情景を描いたショートストーリーがこちらです。
感想はもう、「美しい」のひと言ですね!

削ぎ落とすだけ削ぎ落とした物語が見せるエッジの鋭さ、だからこそ醸し出される叙情。
出逢いが運命なら、恋は閃き――
私にはそんな言葉が垣間見えたのですが、たったの2418文字が、それぞれの読者にいろいろなものを想像させてくれるのですよね。
言うなれば「行間が深い」となりましょうか。

読者によってこの恋物語は形を変えて、共有できるのは動かしようのない結末のみ。
おそらく読後感すら統一できないでしょう。だからこそこの物語はおもしろくて切ない。
できればお友だちみんなで読んでいただいて、感想を言い合っていただけるとあれこれ発見できるかなーと思います!

(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)

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