今回は各ジャンルから、「ひと目で惹きつけられた一作」をテーマに選ばせていただきましたー。
賞への応募作はもちろん、全割り当て分の応募作を最初から最後まで余さず読ませていただくのが下読み業務なわけですが、その中でも最初の部分をちょっと読んだだけで、妙に惹きつけられる作品というものがあります。言い換えればキャッチーな作品だということになりますね。このキャッチーさはすごく強い武器になりますので、このカクヨムへご投稿されているみなさま、ぜひその武器をご自身の作品に持たせてあげてください。そして私にご紹介させていただけましたらば、私が大喜びいたしますよー。よろしくお願いいたします!
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主人公のマキはもうすぐ結婚3周年を迎える妻。
でも、記念日というものにこだわりのない夫はホワイトデーを忘れていました。
それをきっかけに、なんだかいろいろ溜まってた小さな不満が沸きだしてきて、それがいつしか不安にすり替わって――
マキは悩みます。
私はなんのために結婚したんだろう?
この不満から不安への心情の流れ、読ませます。
大切な誰かといっしょにいる人は思わずうなずいちゃう“あるある”ですし、現状まだ出逢いがないーって人には未来日記ですし。
でも、それだけじゃ終わりません。
魅せてくれるんです。
リアルなのにロマンティックで、激しく燃え上がったりはしないけどなによりもやさしい「成熟した恋愛の形」を。
短編とは思えないほど厚みのある、大人の恋愛物語。
誰かとの関係に疲れたとき、さらりと読んでいただけるのもおすすめポイントですね。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
ひと言で言っちゃいますと、この作品は叙述トリックです!
主人公はいっしょに暮らし始めて7年めになる、世界でいちばん愛してる“真波”さんが、今日っていう記念日を忘れてないかなと不安でたまりません。
お風呂は気持ちいい。ハンバーグはおいしい。でも、主人公のはやる気持ちは募るばかり……
というのが物語の起と承の部分。
1345文字のショートショートなので、この次はもうどんでんが返ってオチになるのですが、
いや、やられます。
すばらしく綺麗に落とされて、見事にだまされるんですよ。
これ以上は謎が解けちゃうので言えませんけれども、ムダを極限までそぎ落としたソリッドさがなによりの魅力です。
トリックを成立させるには、たったひとつのしかけがあればいい。
そんな基本的でなにより大切なことを、たった3分で教えてくれる良作ですよ!
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)
もうタイトルのとおりです。
ばれちゃったんです、南野さんがウェブ作家だってことが。
この作品では、どういう経緯でばれたのか、ばれた後、周りの人々の反応がどうなのか、順を追って軽妙な筆で語られていきます。
小さな発端が身バレに繋がる事実、そしてそれすらもネタにしてしまう書き手の業、そして大人たちの粋さ等々がです。
リアル世界にネット人格が晒されるってことで最初はちょっと怖いんですが、読んでいくとどんどん「これならばれてもいいかなぁ」に変わっていくんですよね。
このへんは南野さんの気の持ちようや、まわりの人たちの性格もあるんでしょうけど、リアル世界は思ったよりいいとこだぞーって、読者側もほっこりしちゃうんです。
実際、カクヨムに投稿されてる方も、リアル世界ではそれを内緒にしてらっしゃる例、多いですよね。
そんな方、ぜひご一読あれー。
(必読!カクヨムで見つけたおすすめ5作品/文=髙橋 剛)