カクヨム発ファンタジー作品求む!
2,645 作品
この度は「第4回ドラゴンノベルス小説コンテスト」にご応募いただき、誠にありがとうございました。
第4回となる今回は、過去最高となる2645作品ものご応募をいただきました。重ねてお礼申し上げます。
ドラゴンノベルス小説コンテストは、読者選考ののち編集部内の一次選考を行っており、今回は全応募作の中から36作品を最終選考候補とさせていただきました。前回までと比べてより多くの作品が最終選考に残る形となりましたが、それぞれの強みを持った粒ぞろいの作品たちで、非常に悩ましい選考となりました。最終的にその中から、大賞に「俺だけが魔法使い族の異世界」、特別賞に他6作品を選出させていただきました。
結果的に、領地経営から辺境スローライフ、恋愛、女性主人公の奮闘記などなど、異世界ファンタジーの中でも多様な切り口の作品が並ぶこととなりました。受賞作の書籍刊行は2023年春以降を予定しております。楽しみにお待ちいただけますと幸いです。
また、2023年春からは次回のコンテスト開催も予定しております。第5回の節目となるコンテスト。こちらもぜひご期待くださいませ!
今後もドラゴンノベルスをどうぞよろしくお願いいたします!
総評・講評:ゲーム・企画書籍編集部
ある日、汚らしいエルフを拾った。
商品価値を高めて売れば金になると気づいたので、垢塗れのエルフの身体を洗ってやり、ご飯をお腹いっぱい食べさせてやり、柔らかい布団でスヤスヤと眠りにつかせてやることにした。
ざまぁ対象の悪役小公爵は、ヒロインの悪役令嬢とイチャイチャします!
自分が書いた異世界恋愛小説の世界に転生したブルックスバンク公爵家の小公爵、ギルバートは、自分の小説での役割に頭を抱える。
何故ならギルバートは、物語の主人公でヒロインで悪役令嬢のフェリシアに、ざまぁされて処刑される婚約者なのだから。
ギルバートは小説のように処刑されることを回避すべく、フェリシアとの婚約を解消しようとする。
だが、フェリシアは前世で作者だったギルバートが生み出した理想のヒロイン。
しかもフェリシアは、一度目の人生でギルバートと『聖女』と呼ばれるフェリシアの妹、ソフィアの二人に裏切られ、最悪の死を迎えて死に戻り、今もなお、同じように家族や使用人達から虐げられる、不幸な境遇にある。
そんな彼女の現在の境遇を目の当たりにしたギルバートは決意する。
せめて物語の本番である王立学院に入学するまでの間、彼女に幸せで穏やかな生活を送ってもらおうと。
そして、ギルバートとフェリシアの関係が物語とは一変する。
――敵対関係から、溺愛関係へと。
自作の小説の世界に迷い込んでしまった主人公と、ヒロインの少女とのピュアでいじらしいやり取りが微笑ましいラブコメの魅力に溢れた作品でした。また、設定やストーリーが、考えた本人である主人公の思惑通りには進まない展開がスリリングで、読み手を引き込む仕掛けが丁寧に考えられている点も評価されました。今後、ともするとマンネリになりがちな二人の関係性に、いかに気持ちのいい波風を立てることができるかが課題となるでしょう。
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
見知らぬ異世界に転移しても、ひたすら明るく前向きに突き進む女の子の姿がすがすがしく描かれた、気持ちのいい作品でした。また、「通販サイト」「ネットスーパー」という今時のギミックを物語にバランスよく融合させ、テンポよく描いている点に、読み手を飽きさせない工夫と意識の高さを感じました。テンポの良さと気持ちよさはそのままに、女の子主人公のたくましさはもちろん、ちょっとした「毒」も描いていってほしいと思います。
何かを引き抜くことで始まる物語というのは、古今東西に数多ある。その引き抜く対象は、剣だったり、槍だったり、鍵だったりと多種多様。この物語の主人公・叉鬼狩夜が引き抜いたのは、なんとマンドラゴラだった!
上がる絶叫、遠のく意識。目が覚めたらいつのまにか異世界でさあ大変!
ギルドに登録して開拓者となり、仲間と力を合わせ、魔物に支配された世界【イスミンスール】を冒険し、開拓せよ!
世はまさに大開拓時代!!
人型の球根であるマンドラゴラがヒロインという破天荒な設定が、強烈に目を引きました。加えて、設定のインパクトだけに頼らず、それを生かした物語作りにきちんと気配りがされている点も評価されました。一見奇妙なマンドラゴラのレイラを、いかに「いじらしく」見せることができるかが、この物語の大きなポイントとなるはずです。レイラと主人公の狩夜の関係性をさらに「キモかわいく」丁寧に描いていってほしいと思います。
「単純作業を徹底的に自動化」、それが答えだ――!
・・・・・
スライムしか召喚できない召喚士、アシュレイ。
英雄パーティの雑用係として二年ほど働いたが、己の力ではこれ以上ついていくのが厳しくなり、とうとう追放処分となった。
「明日からどうやって食べていこう……」
半ばやけっぱちになったアシュレイは、そのまま己の才能のすべてをつぎ込んで、一匹のスライムを召喚した。
そのスライムは、特段変わったところのない、見たところ普通の魔物。
だが、アシュレイは気づく。
――このスライム、何でも恐ろしい速度で消化する。
「のんきにスライム育ててたら、いつの間にか領地経営することになってたんだが」
領地経営を始めてからも、アシュレイはこのスライムのおかげでどんどん成功する。
魔物たちは簡単に退治してしまう。
運河はあっさり作ってしまうし、炭鉱の開拓もあっさり進めてしまう。
技術開発をガンガン推し進めて、工業生産も商売も交易もお手の物。
農地の開墾もとんとん拍子で進んでいくし、調子に乗って温泉まで作ってしまう始末。
挙句の果てには、領地内にダンジョンまで開拓してしまった。
「……え、領地改革ってもっと、こう、無理難題とか壁に直面するものだと思っていたんだけど」
やがて、アシュレイは名君と称される一国の統治者へと成り上がるのだった。
スローライフ系&コツコツ内政&ファンタジー物語。
スライムのみを操る召喚士が主人公の本作。生きるために、そしてちょっと下心もありつつ思いついたことをやっていた筈が、気づけば貴族となり、領地を任せられることになっていく国づくり・内政要素の強い作品でした。 日誌調で描かれる文章は主人公の性格も相まって淡々と描かれているのに、起きている出来事はとんでもなく劇的で、読者も気を抜くと置いていかれる速度で成り上がっていきます。後から描かれる他キャラクター視点での環境変化が特に面白く、ここの部分を更に磨いていくことでより素晴らしい作品になれると評価し、特別賞に選出しました。
幼馴染で組んだ探索者のパーティから解雇を言い渡されたアイギスは、どれだけ守っても省みられる事のない日々に疲れたため、辺境に土地を買って牧場を経営してのんびり過ごす事に決めた。
しかし、辺境の町で数々の不動産屋を回った結果、持ち金で買える土地は最後に入ったボロボロの店で紹介された一つだけ。アイギスは不動産屋に勧められるまま、あまりに理想的なその土地を購入した。
ただ、アイギスは知らなかった。その土地が凶悪な怪物のひしめく魔境に隣接している上に、不毛の大地であることを。しかし、騙した商人も知らなかった。アイギスがどんな攻撃も一切受け付けない絶対防御の力を持つ男だと言うことを……。
アイギスによって不毛の大地は変貌を遂げ、とんでもない牧場へと成長していく。
「スローライフもの」はWeb小説において長年の人気ジャンルであります。本作はそのスローライフものの王道ともいえる展開を踏襲しながらも、主人公がとてつもなく「硬い」というキャッチーなオリジナル要素を加えた作品です。だんだんと不毛の土地を開拓していく王道的な安心できる楽しさと、主人公の硬さを生かした今までにない開拓方法、またドラゴンや魔物といった豊かな登場キャラクターが非常にワクワクできる作品となっています。これらの点を評価し、本作を特別賞に選出いたしました。
田舎では貧乏な錬金術師のミレーユ。彼女は13歳で憧れの王都に来てみれば錬金術は衰退していた。結果的にミレーユは世界最高水準の錬金術師だったことが判明する。
この国では13歳で年中式を迎え、半分は大人と認められて結婚もできる。
まずは露店でのポーション販売から始めて、どちらの商業ギルドに加入するかで一悶着する。お店をレンタル契約し錬金術調薬店を開業する。新商品が売れすぎて困ったり、ペットのスライムが忘れたころに活躍したり、火事が起きて大混乱したり、ユグドラシルの木の葉っぱ、世界樹をめぐって騒動があったり、楽しくも忙しい毎日を送ることになる。
相棒のスライムとともに二人で王都の生活を満喫しつつ、弟子の美少女と同棲して通いのメイドさんも加えて、錬金術調薬店を経営していく。
田舎から王都に出てきたエルフの少女ミレーユが、錬金術のお店を開いて活躍する本作。特に評価した点として、ミレーユを中心とした登場キャラクターが生き生きとしていると感じました。ミレーユが健気に前向きにがんばる姿や、周囲の人々との邂逅など、ほっこりとしてそれでいて応援したくなるような優しい作品となっています。様々な情勢が取り巻く昨今、こういった心が温まるような作品が読者からは求められているのではないかと思います。これらのキャラクター描写や物語性を評価し、特別賞に選出いたしました。
「第4回ドラゴンノベルス小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
この作品について語る時、まず外せないのはキャラクターでしょう。物語冒頭から、「助けた場合のメリットは? なし。助けた場合のデメリットは? 処分に困る。ほらね、助けてどうする」と言いながら奴隷のエルフを助けちゃうツンデレ主人公。序盤はそんなお決まりのネタ展開に笑いながらも、主人公に秘められた力や過去が明かされるにつれストーリーに引き込まれます。主人公だけが使える魔法の設定も秀逸。随所に荒削りな印象はあるものの、「キャラクターで掴まれ、ストーリーでハマる」という王道エンターテインメントな味わいを高く評価し、大賞に選出いたしました。