『カドカワ読書タイム短編児童小説コンテスト』へ多数のご応募をいただき、ありがとうございました。 選考をいたしましたカドカワ読書タイム編集部より、総評を述べさせていただきます。

小学校高学年から中学生の読者が夢中になれる児童向け長編小説、そのアイデアの種が多く集まりました。今を生きる瑞々しい感性を持つ読者が楽しく、面白く、ドキドキしながら読める小説を求めて、日常のなかの非日常を感じさせるエンターテインメント性を重視して選考をさせていただきました。

「児童向け恋愛小説（溺愛）」部門の大賞受賞作「バンパイア君、溺愛注意報！」は、溺愛作品として馴染みがある「同居」という要素がある中で、「バンパイア」という異質な相手から溺愛される少し刺激的なドキドキ感がうまく描かれている点や、オリジナリティのある設定が物語に活かされている点などが評価され、まさに編集部が求めていた児童向けの「溺愛」小説であったことから大賞となりました。長編化の際には、ヒーローから溺愛される一方だった主人公の気持ちがどう変化していくのか、それにより二人の関係はどう変わっていくのか、心の距離の変化にとても期待したいです。

同じ「児童向け恋愛小説（溺愛）」部門の優秀賞受賞作「キ・ス・リ・ハ　──同級生とキスシーンを演じることになりました。」では、キスシーンの練習からから始まる刺激的な出会いと、演技が演技でなくなってしまう、でもそんなことは許さないそんなハラハラドキドキのシチュエーションが高く評価されました。ゼロ距離から始まった恋がどんな絆に変わっていくのか、長編化が待ち遠しい作品です。

「児童向けファンタジー小説（異世界転移）」部門の優秀賞受賞作「スプーキーナイトメア・ぷうけえ！」は、「異世界転移」の作品としては珍しい、ホラーゲームの中への転移を描いています。しかし「ゲーム好きの主人公がゲーム世界の中に入り込んでしまい、現実世界に帰れなくなる恐怖と戦いながらクリアを目指す」という王道のドキドキ・ハラハラ感が上手く描き出されていることが評価され、特別賞となりました。都市伝説、妖怪、呪いというホラー要素も、長編化が楽しみなポイントです。

これらの受賞作は、編集者がそれぞれ担当について長編として完成したのちに、カドカワ読書タイムシリーズから書籍化される予定です。 どんな物語が出来上がるのか、刊行を楽しみにお待ちください！