「こんなweb小説を読みたい!こんな作品を世に出したい!」編集者からの4つの挑戦状。
1,609 作品
編集T
魔女見習いことメグ・ラズベリーは、ある日自分が呪いにより十八歳でこの世を去ることを師匠に告げられる。
彼女を延命できるのは、人の嬉し涙を千粒集めて生み出せる命の種だけ。
メグは嬉し涙を集めるため、沢山の人に触れ合う中で、魔女にとって大切なことが何かを見つけ出していく。
出会い、別れ、笑い、涙、友情、愛情。
沢山の物を掴み取った先で、メグはやがて師匠と余命一年の真実について知る。
魔女見習いの少女が紡ぐ、明るく愉快で、少し切ない余命一年の物語。
編集F
レイユエール王国の第三王子、アルフレッド・バーグ・レイユエールはこの国の王族では唯一の黒髪黒眼。呪われた者、『忌み子』にして『嫌われ者』。無能を演じて影に徹し、裏から王国を支えてきた。そんな折、兄のレオルが婚約者のシャルロットに対して婚約破棄を言い渡す。冤罪をかけられたシャルロットを守るためにあえて悪役を演じるアルフレッドは、なんとかその場は令嬢を救うことに成功する。……それで終わりかと思いきや、なんとシャルロットがアルフレッドの婚約者になることに。これまで影に徹してきた第三王子だが、婚約者のために表舞台に上がることを決意する。
「◯◯隠し」というテーマに対し、ご応募いただきましてありがとうございます。
WEB連載ならではの盛り上げ方を意識した展開や壮大なスケール感など、様々なジャンルで技巧を凝らした作品を読ませていただきました。
魅力的な作品が多く選考は非常に悩みましたが、たくさんの意欲的な作品に可能性を感じることができました。
その中でも本作は、謂れなき理由から婚約破棄されたヒロインを救うため露悪的な主人公が身代わりになるという興味深い冒頭に始まり、その後の展開もテンポよくあっという間に読み切ってしまいました。
主人公を取り巻く登場人物たちも魅力的で、「彼らが紡ぎ出すこの物語をもっと読みたい!」そう思わせてくれた点が受賞の決め手となりました。
また、WEB小説の流行を把握しながら、お題に沿った物語を構築する筆力の高さも好印象でした。
今回のコンテストでは、編集者の嗜好が選考基準にもかかわらず多数のご応募をいただき、改めて御礼申し上げます。
電撃の新文芸は2周年を迎え、これからも面白い作品を出していくレーベルでありたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
編集K
あらすじ:「いいか! これから俺が貴様をひとりではなにもできない無様な公爵家令嬢から、敵として立ち塞がるヤツらを無慈悲に薙ぎ払えるクソッタレの殺戮兵器に作り変えてやる! 」
すべてはあの夏の日から始まった。
突如として第二王子から婚約を破棄された公爵令嬢アリシアは、家ごと破滅しかねない絶体絶命の状態に陥ってしまう。
そんな時、彼女の従者アベルにアメリカ海兵隊員としての記憶が突如として覚醒。
滅びの未来を変えるため、お嬢様を連れて学園から戦略的撤退を成し遂げたアベルは、失意の彼女を……一人前の海兵隊員へと鍛え上げる!?
「いいか、縦ロール! 口からクソを垂れる最初と最後に“サー”をつけろ!」
「どういうことですのっ!?」
新兵訓練を経て、見た目は令嬢、中身は海兵隊員へと生まれ変わったアリシア。
しかし、今度は自身の変化によって予想もしない新たな運命に巻き込まれていく。
“守るべきもの”との出会いの中、時に苦悩しながらアリシアは未来を掴むために戦う。
彼女と異世界に召還された海兵隊が切り拓く道の先にあるものは何か!?
異世界よ、これが合衆国海兵隊だ。
――悪行を働いた人間は裁かれる。
社会としてあるべき姿であるからこそ古典から愛される究極のジャンルなんだと思います。
その中で選ばされていただいた『まりんこ!』ですが、その点において秀逸でした。
婚約を破棄され、絶望の淵に沈んだアリシアが、アベル教官による海兵隊式の新兵訓練(ブートキャンプ)によって“殺戮兵器”に生まれ変わる。
出オチ感の強い出だしでしたが、注目すべきは彼女の心の成長です。裏切られ、ただ悲しみにくれるか弱い令嬢から、肉体的にも精神的にも社会的強者(王子)を圧倒する真の強者へと生まれ変わる。
思わず彼女を応援したいという気持ちがわいてきます。自分を振った王子に一言申し上げる姿なんて、まさにスカッと胸アツです。
そして、弱者が強者を駆逐する究極の爽快感を【海軍×令嬢】というまさかの食い合わせで描ききった筆力にはただただ脱帽でした。
この度は、スカッとした物語を読みたい!……というわがままに付き合っていただき、誠にありがとうございました。
拝読させていただいた応募作品は、どれも様々な工夫と演出で驚かされ、読み進むにつれて感情が右往左往させられる力作ばかりでした。
予想の斜め上をはるかに超える、まさかの応募数に本当に悲鳴をあげたのは内緒です。
これからも心を揺さぶる作品をお届けできるよう尽力してまいりますので、「電撃の新文芸」をご愛顧いただけますと幸いです!
編集N/編集M
己の武器は最強無敵の可愛さのみ。『魔物から愛される能力』を身につけて転生した鈴木が、可愛さだけで人々を救い、可愛さだけで無双し、可愛さだけで血と暴力に満ちた世界を変えていく異世界冒険ファンタジー。
新たな最強の切り口をということで、“無双”の切り口がどのようであるかを重視して読ませていただきました。
全体としてかなりレベルの高かった部門だったと思います。
その中でも『残虐すぎる異世界でも鈴木は可愛い』は企画性が高く、あの手この手で「愛される」パターンを展開しており飽きずに楽しむことができた作品でした。序盤、世界観の説明よりもそちらに力を割いていた分、シチュエーションにハマれないと手が止まるかもと危惧したのですがダレさせない造りが見事です。欲を言えば、種族によって「かわいい」の定義が違うと思うので、そこら辺を活かしたギミックがもう少しあると、世界観を深めつつスズキの「かわいさ」についてもより多面的かつ説得力のある展開ができるかなと思いました。
余談ですが、面白い題材/ストーリー展開なのに応募要項を満たさないがため泣く泣く最終選考に残せなかった作品もいくつかありました。
本コンテストに限った話ではありませんが、応募時は応募要項を事前にご確認頂けると嬉しいです。
ご応募いただきありがとうございました。
ライトノベル・コミックなどで根強い人気を誇る無双系物語。
今回はそのような無双系でも武力に頼らない新しいジャンル・切り口での無双を募集させていただきました。
その結果、異世界ファンタジーから学園青春まで幅広いジャンルで、「ツンデレ」「癒し」「知識」などなど新しい切り口の無双が集う非常にレベルの高い選考となりました。どの作品もオンリーワンなアイデアが詰まっており、ワクワクしながら読ませていただきました。
『残虐すぎる異世界でも鈴木は可愛い』は、「愛される」「可愛い」というチート能力を与えられた主人公の無双物語。ハーレムを作って終わりというのではなく、ちゃんと頭を使ってその能力を武器として駆使し、魔王軍に人々が容易く殺されてしまう残虐な世界を変えようとするストーリーが新鮮かつテーマにも沿ったもので秀逸でした。登場キャラクター達はそれぞれ個性的で違った魅力をもっており、シリアスな世界観とそこから展開されるコメディもレベルが高く、終始楽しく読めたので今回受賞へと推しました。
この度は「○○無双」というテーマでたくさんの魅力的な作品をご応募いただきありがとうございました。
電撃の新文芸は引き続き皆様に「おもしろい」作品をお届けするべく励んでまいりますのでこれからも宜しくお願いいたします。
「電撃の新文芸2周年記念コンテスト ――編集者からの4つの挑戦状――」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
余命一年の呪いを受けた少女に、永年を生きる魔女は言った。呪いを解くには、人のために魔法を使い、千粒の嬉し涙を集めなさい、と。
自意識過剰で口汚い小娘と、小うるさく人使いの荒い老婆。その「人間臭い」魔女二人は、誰よりもお互いの悪口を言う一方、誰よりもお互いを信頼して、誰よりも深い愛情を注いでいます。その関係はもちろん師弟であり――そしてなにより、「無二の家族」であると思いました。
いつか訪れる彼女たちの別れのそのときを、どうかより多くの人に見届けてもらいたいと心の底から感じた、これこそが本作品「ある魔女が死ぬまで -メグ・ラズベリーの余命一年-」が受賞に至った理由です。
カッコつけずに言うと、この師弟が好きになったから受賞です。優勝です。もうね、打ち負かされました、本当に。僕の負けです、負け。
……さて。今回のテーマにおいて、皆様の作り上げた数多の熱い「師弟関係」を読ませていただきました。シンプルなテーマ故に、悩まれた方も多くいると思いますが、ぶっちゃけ僕もハチャメチャに選考に悩みました。しかし、それだけ魅力的な「師弟関係」が集まってくれたということの証左であり、今はその事実に深く感謝しております。
特に最終選考に残った作品は、あと一歩で受賞に至らなかった作品ばかりです。この機会に、今まで手が伸びていなかった読者にも、これらの物語が届くことを願っております。
僕は、物語の基本は人間関係にあり、と信じています。これからも魅力的な「関係性」を追い求め、つぎの「おもしろい」を発掘していきたいと思っています。 皆様、対戦ありがとうございました!