あなたの考える、極上の「デスゲーム」をお待ちしています。
292 作品
この度は、角川ホラー文庫主催デスゲーム小説コンテストにご参加いただきありがとうございました。
2023年は角川ホラー文庫が30周年を迎えた年ということで、新たな試みとしてカクヨムにてコンテストを行いましたが、「デスゲーム小説」というニッチなお題のコンテストにもかかわらず全292作品のご応募をいただきました。ご応募いただいたすべての作品、ならびに著者の皆様に心よりお礼申し上げます。
一次選考に関する講評はこちらのお知らせに掲載しておりますが、全応募作の中から16作品を最終候補作とさせていただきました。どれもキャラクターや設定に工夫を凝らした力作揃いで非常に楽しく読ませていただきました。最終的には、大賞1作品、アイデア賞2作品を選出いたしました。アイデア賞は最大3作品を予定しておりましたが、「他のデスゲーム小説で今までに見たことのない新しいアイデアであること」を1番の評価軸として考えた際に、アイデア賞を受賞された2作品が抜きん出ていたことから、今回はアイデア賞を2作品とさせていただきました。
大賞受賞作品である『Q eND A』は現段階でアイデアが非常に優れており完成度の高い作品となっていますが、より一層たくさんの方の心を揺さぶるエンターテインメント作品としてお届けするべく、角川ホラー文庫での書籍化の準備を進めて参ります。
第2回のコンテストや別のお題でのミニコンテストもまた開催出来ればと考えておりますので、今後も角川ホラー文庫をよろしくお願いいたします。
角川ホラー文庫編集部
主人公、A(本名:芦田エイ)と友人たちが巻き込まれたデスゲームは、『異能力早押しクイズ』。
参加者はそれぞれ与えられた『異能力』を駆使して、早押しクイズを勝ち残らなければならない。
クイズに負けるか、自分の『異能力』が他の参加者にバレたら死亡。
Aは、クイズの答えが分かる最強の『異能力』、『アンサー』を引き当てる。
「『アンサー』だってバレさえしなければ、生きて帰れる」
能力がバレないように知略を巡らせるA。しかし、その前に立ちはだかるのは。
「ボクはQ。職業は……クイズ王」
早押しクイズ×異能力バトル。脳をひりつかせる極限のQ地に、ただ一つのAを導き出せ。
迷宮入り殺人事件の犯人、若槻明宏はある日、山中の屋敷に呼び出される。果たしてそこには六人の男女が。屋敷の主は「ここにいるのは全員迷宮入り事件の殺人犯だ」とし、全員にこう命じる。「自分の罪を隠せ、他人の罪を暴け」
ミステリ×デスゲームという方向性の作品は応募作の中でもたくさんありましたが、その中で際立ってアイデアが優れていたのはこの『迷宮入りクラブ』でした。「あなたがしたことを知っています」という手紙が届いたことから山奥の屋敷に招待された主人公。屋敷の中には迷宮入りした事件の現場が6つ再現されていた。集められた人間は七人。屋敷を出るためには、他人の罪を暴き、誰かに自分の罪を着せなければいけない。高い文章力も相まって、冒頭の屋敷の中を巡りながらゲームのルールが説明されるシーンは読みながら非常にワクワクしました。王道的ミステリの設定をデスゲームに持ち込んだ素晴らしいアイデアを評価し、アイデア賞とさせていただきました。
早坂俊太郎は、朽ちかけたプレハブ倉庫のような場所で目を覚ました。
外は廃墟と化したレジャーパークで、遠くには錆びて哀愁を漂わせる観覧車が佇んでいた。
傍らに置かれたスマートフォンを手に取ると、突如デスゲームが開始された。
QRゲームへようこそ。
それは、プレイヤーの身体のどこかに描かれたQRコードを読み取り、懸賞金を奪い合うゲーム。
懸賞金を獲得して生き残れるのはたった一人だけ。
かつて自分を不幸のどん底に突き落とした人物が、参加者の中にいる事を知った早坂の取った行動とは……。
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
デスゲーム小説はシンプルな設定にいかに独自のアイデアを取り入れるかが大切ですが、『QR』はその点において非常に優れた作品でした。突然廃墟と化したレジャーパークで目を覚まし、手にはスマートフォンというお約束の導入から始まる本作は、プレイヤーの身体のどこかにQRコードが描かれており、それを読み取ることで懸賞金を奪い合うというゲームが、わかりやすさもありつつ現代性と独自性が感じられ高く評価されました。特に懸賞金に関して自分の懸賞金がわからない、という設定がプレイヤー同士の心理戦を描く上で非常に効果的であり、他にはない設定の掛け合わせということでアイデア賞に選出させていただきました。
「角川ホラー文庫 デスゲーム小説コンテスト」の中間選考の結果を発表させていただきます。
多数の力作を投稿してくださった皆様、並びに作品を読んでくださった皆様には、改めて深く御礼申し上げます。
※掲載の並びは作品のコンテストへの応募順となっております
講評
早押しクイズ×デスゲームという万人に伝わるわかりやすい設定でありながら、登場人物それぞれに与えられた固有の特殊能力によって独自性が加えられ、今までにない新たなデスゲーム小説の誕生を感じました。デスゲームというと武器を持って戦う作品を思い描きがちですが、本作はそれぞれの能力設定のバランスが非常に素晴らしく、直接的に危害を加えるような命のやりとりがなくともデスゲームならではの緊迫した心理戦を味わうことができ、その点が高く評価されました。また、早押しクイズと特殊能力という設定が最初から最後まで一貫して物語に深く関わっていることも、高い評価を受けました。読者を驚かせるどんでん返しも用意されており、デスゲーム自体のゲーム性、キャラクター作り、構成などすべてにおいて高いレベルの作品であると感じられ、大賞受賞作品とさせていただきました。