概要
見えすぎるほどに見えているのに、その瞳には何の感情も宿らない。
そんな彼を一変させたのは、白杖を手にした転校生だった。鮎川愛。
生まれつき光を持たず白杖と共に生きる彼女は、閉じたままの目の奥に誰よりも強い輝きを秘めていた。
湊の死んだ目を自分と同じ障害と信じた微笑ましい勘違いから始まった友情は、やがて湊の心の奥に眠っていた感情を静かに揺り起こしていく。
湊は愛のために空の色や風の温度を言葉に紡ぎ始める。見えない彼女に景色を届けるたび、死んでいたはずの瞳が世界を捉え直していく。
世界を言葉にするたびに、死んだ瞳が色づき始める。「恋は盲目」とシェイクスピアは書いた。これは、その意味を塗り替える物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!死んだ魚は、いかようにも息を吹き返せる
シェイクスピアの一節から始まる物語は、「見ること」という繊細なテーマを機軸に、日常世界が丁寧に描かれていきます。
当たり前のように世界を見てきた者と、そうでない者との対比は穏やかに中和され、やがて見ることの真意へと向かっていく。
何かを認めることの難しさと、受け入れた先にある新たな視界。
普段よく「心の目」という表現を耳にしますが、身体的な眼はあくまで一面的な機能にすぎず、本当の意味で世界を見渡すことを教えてもらっているような心地になりました。
肩肘を張らない穏やかな筆致で綴られる描写は、傷つく要素で溢れる日常世界に新たな希望の視座を与え、恋をよりいっそう鮮やかな色で染めていく。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「書く人」にこそ読んでみてほしい
一章まで読ませていただきました。
感情に動きがなかった主人公が、盲目の転校生との出逢いによって、自分の心を知っていくようになります。
けれど、自分もまた彼女に影響を与えていることには、(第1章ではまだ)気づいていないのでしょう。
そのもどかしさも本作の魅力だと思います。
ただ……個人的にそれよりも「好き!」と感じるのが、技法です。
書く人なら分かってもらえると思うのですが、
情景描写は重ねるだけ鮮やかに風景を伝えられる反面、字の文に落とし込まれることで、どうしても冗長な印象を与えてしまいます。
このバランスをどうするか、悩んだことがある方もいるでしょう。
ですが…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「恋は盲目」と伝える盲目な少女に景色を灯す、「死んだ魚の目」をした少年
「死んだ魚の目」をしていると言われ続け、受け入れていたネガティブな鈴木と、
「目が見えない」ハンデを物ともせず、見えている以上の世界を語るポジティブな鮎川。
ゆっくりと進みゆく交流の中、彼が彼女に伝える「死んだ魚の目」に写る世界は、
とても丁寧に、繊細な描写(口調)で夕焼けや虹の美しさを彼女に与えます。
彼女はシェイクスピアの「恋は盲目」という言葉を盲目である彼女特有の解釈を用いて、
色を失っていた彼に少しずつ取り戻させていきます。
目に映るものが違う二人が距離を縮めていく姿に、読者の心も温まります。
時間をかけてじっくりと読み耽りたい方にオススメできる、とても優しい物語。