第3話 Hunger Shooter/03(終)

「おかえりなさい!」

 強い灯り、子供の声、小さな破裂音。

 扉の向こうは情報の洪水。


 だから、眩しさに目を瞬く。


「ああ、ただいま。準備出来てそうだな」

 地下駐車場に車を停め、従業員用エレベーターで裏口から入った筈だ。

「うん、笠下さん、大体準備おっけーだよ♪御堂坂さんもお帰り」

 少女が視覚に飛び込む。

 笑顔、だ。

 まだ挨拶は難しいかな、と眉を寄せると笠下は続ける。

「お、こっち選んだのか、趣味がいい、いっそ正規に雇用したいぞ」

「またまたー、もう社長、ありがとうございます♪」

 テーブルの上に並ぶ大皿に乗った七面鳥、ケーキ、フライドチキンにポテト。

 並べられた燭台に新品の蝋燭。

「ふん」

「おいおい、今のはいただけないと思わないかい?思わないんだったら教えてあげるよ」

 割り込んでくる、頭上からの声。

 身を起こすと、壁の飾りをつけている青年が見える。

「せめて『おいしそうだね』とか、『苦労したんじゃない?』ぐらいは聞けるようじゃないと」

「お前が言うな、ミチノリ。なんなら今晩お仕置きするぞ」

 女性に言われて涼しく笑う青年。

「済まないがユウ、疲れた。先にボトルをくれ」

 どかっとソファに座りグラスを手に取ると、少女に声を掛ける。

「ユウじゃなくてハルカです!もう、良いですけど開始までに空けちゃわないで下さいよ」

 女性の視線がこちらに向く。

 彼女は悪戯っぽく笑って、グラスを差し出す。

 仕方なく受け取る。しばらくしてボトルが女性の元に届き、ぞんざいにスクリューをひねって、無言で差し出す。


  とくとくとくとく


 注がれる液体。

「ヒサ」

 容赦ない声。

「――面倒ごとは」


  ワスレロ


 何故か全てが暗闇に堕ちていく。


 サイレン、喧騒、怒号。

 モールの灯りが届かないここは、安息の地……なのだろうか。

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Extra Orders 日比野 英次 @A-easy

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