【燈乃つん@🍮様とのコラボ作品!】縁と日々と、流れ星と。

千央

縁と日々と、流れ星と。

 ここは『ギャル女神』本編からおよそ、300万年前の天界。流星や千秋はもちろんまだ存在しておらず、地球ではまだ人類の祖先がやっと誕生し始めた頃のこと。まだデメテルたちが流星と出会う遥か前、デメテル2000万歳(地球換算20歳)、アルテミス700万歳(地球換算7歳)の時代のお話。

 神隔世かくりょと呼ばれる天界とは別の神々が住む世界。そこから二人の女神様がやってきて……?


◇◇◇


 あら?あの子ったら、まだ来ていないのかしら?もうすぐのに……!いえ、うっすらと気配を感じます。また隠れて悪戯ですか?


「何処にいるのですか?隠れてないで早く出てきて下さい!さもないと、冷蔵庫にある貴女の大好きなは全部、私のものになりますよ!」

「な、な、な!なんじゃそれは~!?横暴なのじゃ!理不尽なのじゃ!それから、え~っと、貴婦人なのじゃ!」


 声を発した途端、すぐ後ろにある大きな桜の木から彼女の声がする。神社を守るようにそびえ立つ桜の大木。私は昔からこの木が大好きだった。貴女もお気に入りなのですね。それから……貴婦人は悪口ではないんですよ?


「やっぱりそこにいたんですね?またそんなところに登って!早く降りてきて下さい!もうすぐ出発ですよ?」


 彼女は太い枝の上に鎮座しており、こちらを見ながら口をもぐもぐとさせていた。え……?もぐもぐ?


「良いではないか、少しくらい……夜中にこうしてわざわざ来たのじゃ。大目に見てくれても良いと思うがのう。んぐ、こうして、を食べておるのじゃから、ちょっと待つのじゃ」

「……っ!?はぁ、またですか。外で食べるのはおよしなさいとあれ程、言ったではありませんか。しかも、今は食べている時ではありません!早く降りてこないと、ですよ」


 全く、自由な子ですね。そんなことを思いながら彼女に満面の笑みを向け、神力を高め始める。次第に風が集まり私を中心に回り始め、一緒に桜の花びらも舞い始める。そして、やがてつむじ風へと変化し、その凄まじい力で狙った対象を――


「ま、待てっ!待つのじゃ!降りる!わしはいますぐ降りるぞ!だから、それだけはやめてほしいのじゃ!!」


 焦った様子で手に持つプリンを口へと放り込み、枝から飛び降りる彼女。


「素直な子は大好きですよ」

「笑顔で神力を高めるのは反則じゃぞ?」

「罰として、貴女のプリン、後で一つ貰いますね?私だって大好きなんですから」

「え~~~っ!?ぐっ!し、仕方ないのう。ほんっと~に、一個だけじゃぞ!?」

「えぇ、約束します。さ、いつまでもむくれてないで、本当に行きますよ?夜中しか向こう側への道が繋がらないんですから」

「わっ!置いてかないでほしいのじゃ!わしも一緒に行くのじゃ~!」


◇◇◇


「いい?アルテミス。来週からアカデミー初等部3年生なんだからね?新しい先生にちゃんとご挨拶するのよ?よく言うことを聞かなきゃダメよ?」


 わたしの髪をコテで整えてくれながらそう話すのは、神アカデミーを卒業して毎日、お仕事に忙しいお姉様。とっても綺麗でわたしの憧れなんだけど、普段からあれしちゃダメ、これしちゃダメってお小言が多いのがちょっと残念かも。でも、きちんとなりたい自分になれた凄いお姉様なの!自慢のお姉様なんだ。なんたって『豊穣の神』として認められたんだから!

 いいなぁ。わたしも早く『月と星の神』になりたいな。もう『極小アルファ』だって覚えちゃったもん。他の子たちはまだ誰も覚えてないんだよ?それに、アリアさんから押忍の心だってっちゃんと教わってるし。あれ?お姉様って、アリアさんのこと知ってるんだっけ?ま、いいや。いつか連れてってあげよ~っと。


「は~い!」

「あなたって返事はいつも良いのよね。心配だわ。こないだみたいにいきなり、流れ星を呼び寄せたらダメなのよ?」

「だって、あれは担任の先生がいけないんだもん。『極小アルファ』を覚えたんだよって教えてあげたのに、ちっとも信じてくれなかったらつい……」

「つい、じゃないの!ほんとビックリしたわよ。もうちょっとで天界にぶつかるところだったんだからね!?」


 あはっ!お姉様、激おこプンプン丸だ。あ!やったぁ!いつか使おうと思ってたアニメのセリフ、やっと使えた!わ~いわ~い!


「こ~ら!真面目に聞くの!」


 また怒られちゃった。ほんと、プンプン丸なんだから、お姉様ってば。


◇◇◇


「のう、ウカミ。今日はどうして天界とやらにきたのじゃ?わしたちの神隔世かくりょとはまた随分、違う街並みじゃのう」


 あちらこちらにキョロキョロと頭を振り、可愛らしい声で私に尋ねる彼女。橙色の美しい艶のある髪と狐の耳、髪の色と同じく橙色の毛並みが鮮やかな尻尾。そして、なんと言っても目を引く彼女の金色の瞳。それはまるで光り輝く至高の宝石、皇帝黄玉インペリアル・トパースのよう。そして、人の世界でいうところの巫女装束を思わせる出で立ち。まぁ、短くした下半身部分(しかも、スカート)は好みが分かれるところでしょうけど。殿方には受けがいいかも知れませんね。

 彼女には理由があって、実はまだ名前がありません。彼女には秘密なのですが、付ける名前の候補に良さそうな素敵な何かがあれば、と思って異文化交流のついでにこちらの世界に探しに来たのです。


――天界

 神々や天使の住まう場所。そして、死した魂の集まる場所。天界の他にも神々の住まう世界は幾つかあり、神隔世かくりょもその一つ。


――神隔世かくりょ

 天界とは異なる神々の住まう場所。私や、先程、私のことをと呼んだ彼女が住む世界。そこにも数多くの神々が住んでおり、非常に豊かで平和な美しい世界。天界との交流も古く、定期的に異文化交流が行われている。


「あら、言ってませんでしたか?他の世界の神々との交流に来たのですよ。神隔世かくりょ以外の外の世界と交流を持ち見聞を広める。そうすることで自身の成長を促す。それは――」


 歩きながら街並みを見る。なるほど。確かに私たちの住む世界とはだいぶ、服装や建物の感じが違うようですね。それでも、街の賑わいはそうは変わらないようです。大通りのたくさんの商店から盛んに飛び交う呼び声、神たちの買い物を楽しむ様子、見上げるといつまでも見ていたくなるような爽やかな青空。

 私たちの住む世界とは違っても、どこか楽しく心躍るようなこの感覚がたまらなく心地良い。神隔世かくりょの稲穂を連想させる金色の空も私は好きですけど、青空というのも中々のものですね。ふふっ、この子も楽しそうで本当に良かった。


「プリンを食すことよりも大切なことだと、アマ様も仰っていたではないですか(言ってません)」

「え~~っ!?プリンよりとなっ!?そ、そうじゃったかのう……?」


 金色の瞳を丸くして驚く彼女。そんなに素直に信じなくても……ほんとに心根の優しい素直な子ですね。そんな彼女に私は素知らぬ顔でしれっと、そうですよ、と答えるのだった。


「それにしても、なんだか皆、わしたちを見ておらんか?」


 そう言われ周りを見渡すと、天界の住人である神々や天使と呼ばれる大きな翼の生えた者たちからの視線が私たちに集まっていた。


「多分、私たちの格好が珍しいのでしょう」

「ふぅむ、確かにな。ウカミのその銀髪狐耳も珍しいのかも知れんなぁ。おまけに着物もこっちの天界とやらでは誰も着ておらんようじゃぞ?」

「そのようですね。でも、その方がかえって人目を引きますし、交流しやすいかもしれませんよ?先程のお店の方も大変、よくして下さいましたしね」


 お昼ご飯にと買った二人分のお弁当の手提げ袋を持ち上げ、彼女に見せる。その途端――


――ぐぎゅるりゅう~~っ……


「…………」

「…………」

「……ウカミ、なんか言うてくれないと恥ずかしいのじゃ」

「まぁ!大きなお腹の音!まるで、猛獣のような――」

「な、な、な!声がおっきいのじゃ!しかも、誰がそんなことを言ってくれと頼んだのじゃ!?」

「違いましたか?」

「わしはただ、『お昼にしましょうか?』とでも言って欲しかったのじゃ……」

「失礼。では、改めて……お昼にしましょうか?」


 彼女はコクンと恥ずかしそうに頷く。やはり、彼女はからかうと面白い……いえ、育てがいのある子ですね。私は心の中でそっと思うと、彼女の手を取り目の前の広場へと向かった。


◇◇◇


「来週からの新学期楽しみだな~。今日は何しよう?アリアさんは今日、用事でいないって言ってたし、何かすることないかな」


 あのあと、お姉様は自分の支度をしてさっさとお仕事に行っちゃったし、お母様もお父様もお仕事。春休みっていっても大人は全然、休みじゃないんだよね。つまんない……。

 そんなことを考えながら、家から少しだけ遠くにある広場へと来ていた。そこはお気に入りの場所。何か悲しいことや嫌な事があった時によく来るんだ。特に何もなくても来てるけどね。


「そ~だ!せっかくだからの練習しとこうかな。先生も新しく覚えたことはしっかり復習しなさいって言ってたし!」


 そうだそうだ、それがいい!わたしはウキウキしながら、あまり他の神や天使さんたちがいない場所に移動した。こないだ覚えたばっかりの『極小アルファ』の能力【小さいわたしの小さなリトル・シューティ願いを星にのせングスターて】をしっかり復習しないとね!


◇◇◇


天界こっちのご飯も中々じゃのう。まぁ、ちと味付けが薄いような気もするが。それに、プリンも置いてなかったしのう。それが残念じゃ」

「そうですね、お店の天使の方に伺ったら、プリン自体知らないご様子でしたからね。もしかしたら、食文化の水準は私たちの世界の方が進んでるのかも知れませんよ?」

 

 緑いっぱいの広場。心地良いそよ風と木漏れ日が優しく体を包み込んでくれる。そんな穏やかな空間の中、私たちはお喋りをしながらランチタイムを楽しんでいた。

 するとその時、突然、辺りにもの凄い音が響き渡る。


「なっ!なんじゃっ!?何があったのじゃ!?」

「分かりません!いきなり――」


 また響く轟音。これは例えるならそう、まるで、隕石が地表すれすれをかすめて大気と生じる摩擦音のような感じですが……?


「ウカミ!上じゃ!」

「っ!?えぇっ……!?」


 言われて見上げると、昼間だというのに空に幾つもの流れ星が現れていた。そして、とてつもない速さで地表の彼方へと吸い込まれていく。


「あ~ぁ。また、失敗しちゃった。中々、狙った方向に飛んでいかないな~。なんでだろ?う~ん……」


 その光景に驚いていると、ふいに女の子の声が聞こえた。目の前の大きな木の陰に隠れて見えなかったが、少女がいつの間におり、なにやら唸っているようだ。

 少女が再び口を開くと呪文のようなものが聞こえ、空から流れ星がやってくる。そして、耳をつんざくような摩擦音とともに消えていく。


「……なんじゃ、あやつは!?悪魔の申し子か!?」

「いえ、どうやら天界の神の子供のようです。隕石を操る能力があるとは聞いたことがあります。でも、それはのはず!まさかあのような幼子が幾つもの隕石を操るだなんて……!?」


 さすが天界。私たちの想像を遥かに超える能力があるというわけですか。非常に興味深いですね。交流はなにも大人の神とだけするという決まりはありません。この子とも話してみたくなった私は、怖がらせないように笑顔で声を掛けた。


「また失敗しちゃった。あ~ぁ、やんなっちゃうな~」

「もし?そこのお嬢さん?」

「えっ!う、ウカミ?正気か!?その悪魔に話しかけてどうするというのじゃ!?」


 まだ悪魔と言い切る彼女。違いますよって教えてあげたのに。


「悪魔じゃありませんったら。あら、これは失礼。可愛らしいお嬢さん、こんにちは」


 突然、話しかけたからか、ビックリして尻もちをつく少女。黄金色の髪が綺麗にセットされ、ゆるやかなウェーブがかかっている。まるで、 蒼 玉 ブルーサファイアのような瞳はパッチリとしていて、とても人懐っこそうな印象だった。


「あら、大変!ごめんなさいね。大丈夫?」


 慌ててその少女に手を差しのべ、助け起こす。


「ありがとうございます。わたしの方こそ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてたの」


 ぺこりと可愛くお辞儀をして、アルテミスです、と自己紹介をしてくれた。


「ご丁寧に恐れ入ります。私はウカミ、彼女は――」


 まだ訝しげな、恐る恐るといった感じで様子を見ていた彼女に視線を送り、挨拶を促す。


「そ、そうじゃな。言葉は通じるようじゃし、襲い掛かってくることもあるまい。こんにちはなのじゃ!わしは……わしは、まだ名前がないのじゃ。まだ新米なものでな。こういう時、不便じゃな?」


 明るくそう話す彼女。しかし、その瞳には僅かに憂いが含まれていた。


「そうなの!?じゃ、わたしが付けてあげよっか?せっかくお友達になったんだもん!名前で呼びたいじゃない?」


 ニコッと無邪気な笑顔を向ける少女。


「「えっ?」」


 少女の申し出に、私たちは驚いて思わず声を上げてしまった。


「ほ、ほんとか!それは嬉しいのう。それに、友達って……わしと友達になってくれるのか?」

「うん、もちろん!そっちのお姉さんもね!」

「えぇ!?私もいいんですか?」


 私の言葉に、少女は当然といった様子で大きく頷いた。


「ふふっ、ありがとう。あなたは優しいのですね」

「ほんとにそうじゃな。優しいのじゃ。半分は優しさで出来ておるのじゃ」


 ……え?じゃあ、あとの半分はなんだというのですか??


「それじゃあ、え~っとねぇ……その頭についてるのは狐さんの耳なの?わぁっ!すごい!尻尾もある~!これはオレンジ色?かな?お姉さんの髪、銀色に光ってるね!すっごくキレイ~!素敵!可愛い~!!」


 私たちの髪や狐耳、尻尾に興味津々といった感じの少女。その嬉々とした様子に思わず頬が緩んでしまう。


「それに、お姉さんの瞳、すっごくキレイ~!赤いお花みたいにキレイだね!」

「ありがとう、アルテミスちゃん。私の瞳って独特でしょう?皇帝薔薇輝石インペリアル・ロードナイトっていう鉱物の色に似てるんですって。赤いバラのような美しい色だそうですよ」

「なんじゃ、ウカミ。遠回しに自分の瞳が美しいと言っておるのかの?」


 くひひ、と悪戯っぽい笑みで私を見つめる彼女。


「なっ……べ、別にそういうわけでは……」


 全くそんなつもりはなかったのに、なんだか恥ずかしいですね。


「ううん!お姉さんの瞳、すっごくキレイだよ?二人ともキレイな髪に瞳に狐さんの耳に尻尾まであって、いいないいな~!」


 はぅっ!いま、ズキューンときてしまいました。なんと、褒め上手な子。


「のう、ウカミ?こやつは随分、フレンドリーというか親しみやすいのう?まぁ、こんなに褒めてくれるのは、ちとこそばゆいがの」


 照れて赤くなった頬を必死に両手で隠し、小声でそっと呟く彼女。耳がせわしなく動き、尻尾もブンブンと素早く大きく揺れている。ふふっ、とっても嬉しいんですね。分かりますよ。

 自分の感情を押し殺さず、良いと思ったことは相手に伝える。そんな当たり前のことが大人になると中々、できなくなるものですから。この小さな神のお子に、当たり前だけど素敵なことを教わってしまいましたね。


「わかった!狐さんみたいにとっても可愛いあなたは『コン』ちゃん!そして、お姉さんは銀色の耳と尻尾がとってもキレイだから、『ギン』ちゃん!ね!どう?」


 とっても嬉しそうな顔でそう言い放つ少女。あの……私も?私、名前あるんですけど……。


「『コン』か~!良い名じゃ!気に入ったぞ!ありがとうのう!」


 満面の笑みでニッコリ笑う『コン』。そして、隣の私に視線を向け、『ギン』ちゃんもよかったのう、とまたもや悪戯っこな笑みを浮かべるのだった。


◇◇◇


「お姉さんの名前、間違って考えちゃった。本当にごめんなさい!」

「いいんですよ。とっても嬉しかったですから。実は私たち、天界とは違う世界の神なんです。だから、天界に来た時の名前として使わせて下さいね」

「おぉ、それは良い考えじゃの!わしも天界ではコンじゃ!嬉しいのう!」


 それから私たち三人は、色々な事を話した。天界のこと。アルテミスちゃんが『月と星の神』を目指していること。お姉様がいてお小言が多いけど、とっても大好きなこと。いま、隕石を操る能力の練習を頑張っていること。

 そして、神隔世かくりょのこと。私とコンが見聞を広めるために天界へ来たこと。新しい友達ができてとても嬉しかったこと。プリンが大好きなこと。プリンを知らないアルテミスちゃんのために次来る時に必ず、持ってくること。

 最後に、元の世界に戻る時間がまもなく迫ってきていること……。


「え~!もう帰っちゃうの?せっかく、お友達になれたのに……!」


 本気で悲しそうな顔をするアルテミスちゃん。コンも寂しそう。耳はペタッと倒れ、尻尾の揺らぎに哀愁が漂っていた。


「ほら、二人とも元気を出して下さい。また来られますから、ね?」

「……そうじゃな。またすぐ来るのじゃ。その時はまた一緒に話でもしようかの」


 そう言って、精一杯の笑顔を見せるコン。


「うん……その時までにいっぱい練習して、カンペキな流れ星を完成させるね!そして、狙ったところに落とすんだ~!」

「……ちなみに、どこに落とすつもりなのじゃ?」

「う~ん、天国とか?」


 ……っ!?一気に地獄になりそうです。


「そ、それはやめておくのじゃぞ?よいな!絶対じゃぞ!?」

「じょーだんだよ~」


 コンみたいな悪戯な笑みを浮かべるアルテミスちゃん。本当に悪魔の申し子ではありませんよね?……ね!?


◇◇◇


 アルテミスちゃんと別れて、神隔世かくりょへの帰り道。ふいに、コンがこんなことを言い出した。


「とっても素直な良い子じゃったな。でも、あの隕石落としはちょっと怖かったのじゃ」

「そうですね。でも、あの子ならきっと、良い使い方をしてくれることでしょう」

「隕石落としの良い使い方ってなんじゃ??」

「……世界滅亡ごっこ、とかですかね?」

「それ良いことかの?しかも、ごっこでは済まないのじゃ~!」


 ふふっ。それは冗談として、本当に気持ちの良いお子でした。あの子ならきっと、これからの神隔世かくりょと天界の良い懸け橋になってくれそうです。


「コン?」

「なんじゃ、ウカミ」

「元の世界に戻ったら、また新しい名前を探しましょうね」

「そうじゃな。でも、なぜかこの『コン』という名前にのじゃ。とっても心の温かい誰かがそう名付けてくれる。そんな予感がするのじゃ」


 そう話すコンの顔は、とても穏やかで嬉しそうに笑っていた。コンがそう言うなら、そうなのかも知れませんね。


「そうなるといいですね」

「そうじゃな」

「思えば、不思議な縁ですね。貴女との出会いも、そして、今日のアルテミスちゃんとの出会いも」

「わしもいまそう思ってたのじゃ。本当に不思議な日々じゃな」


 ゆっくりと歩きながらコンを見る。コンも私を見ていた。そして、ほぼ同時に口を開く。


「あんなことがまたあったらいいですね」

「コンな日々ことがまたあったらいいのう」


 言葉が重なったことに驚いて思わず、お互いに笑ってしまう。またいつか、いえ、近い将来きっと、素敵な縁と日々が待っている。そんな気がしてなりません。

 でも、なぜでしょう?私のプリンが一大事になる、そんな予感もするのです。それだけは絶対に死守せねばいけませんね!



☆☆☆


本作のイメージイラストを作成してみました。

お時間ある方は下記リンクにぜひ、お立ち寄りください。

近況ノートに飛びますので、下にスクロールしてご覧くださいね。


https://kakuyomu.jp/users/reonmariko/news/822139840862296773

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