◆怪談詰め合わせ◆〔ふしぎ編〕
茶房の幽霊店主
第1話 ◆怪談詰め合わせ◆〔ふしぎ編〕
=実話怪談=◇不思議&どうぶつ系・詰め合わせ
短めの三編です。気楽にお茶でも飲みながらどうぞ。
※※※※※
【夢日記】
一時、夢日記をつけていたことがありました。
就職したばかりで新社会人として、夢の分析で自分の心理状態を知るという目的もありましたが、昔から絵を描いていたので、何かしらのネタ帳として使おうと思っていたのです。
四カ月ほど経過して、同じ内容の夢を繰り返し見ていることに気が付いたのです。
その夢は、曇天でうっすら明るく、小雨が降っている中でなぜかレインコートを着た自分が、土手の道をマラソンをするようなフォームで走っているのです。
しかし、つまづいて、草が生い茂った斜面を勢いよく滑り落ちていく。
不安をあおるような内容なのですが、最初見たときは忘れていたようで、その夢を見る間隔がだんだんと狭くなってきたので気が付いたのです。
三週間、二週間、一週間、とカウントダウンし始めました。
五日、四日、三日、二日、最後は毎日その小雨の夢を見るようになり、
“おかしいな”と思っていました。
朝、出勤するため、自転車で駅に向かいます。
まだシャッターが閉まっている商店街を通過しながら右折しようとした瞬間、自転車ごと転倒しました。
そのまま商店街の冷たいタイルの上を滑りながら既視感を覚えます。
“これ!?これだったのか!!”
そのまま、自転車と一緒に積み上げられたごみ袋に激突して、何とか止まりました。燃えるごみの日でなければ、シャッターや支柱にぶつかり、大ケガをしていたかもしれません。
なんとかごみ袋クッションから離れ、体のあちこちを確認しました。
打撲していましたが骨折はなく自転車も無事でした。
電車に遅れてしまうので、駅に行こうとすると
『あんた、えらい勢いで吹っ飛んだけど、大丈夫か!?』
店の前を掃除していた商店街の人が声をかけてくれたのですが、
『大丈夫です!急ぎますので!』
一礼してからそのまま会社に出勤しました。
転倒の一件から、小雨の夢はぴたりと見なくなり、あの夢は読解が難しい予知夢だったのか? こんなに分かりづらいなら、あまり意味がないなぁ……。
その後、夢日記を書くのはやめました。
◇◇◇◇◇
【おくり犬】
学校がかなり遠かったので自転車で登校していたのですが 、帰りの橋の上、首輪をしたマメシバが現れ、『待ってた!待ってた!一緒に帰ろう!』そんな感じで フレンドリーにぴょんぴょん嬉しそうに付いてくることがありました。
見たことのない犬ですし、どこかで会った覚えもありません。申し訳ないとは思いつつ、土手がすぐそこなので散歩中の飼い主もいるだろうとマメシバを振り切って橋を渡りました。
背後では追っているのか、チリチリチリチリ……。
と首輪の鈴の音が聞こえていました。
次の日も、その次の日も、マメシバが付いてくるので、一緒に帰っていた友達も不思議そうにしていました。
『知ってる犬じゃないの?』
『いやいや、知らないコだよ。見たことないし』
犬は視力がそれほど良くないと聞きますし、においで判断しているとしても【人違い】することがあるのでしょうか?
また、別の日、田んぼの脇道を先輩と通っていると、稲刈りの終わった田んぼの向こうから、白い犬が弾丸のようにこちらに向かって走ってきて、思わず立ち止まると膝に両前足をつけ、
『やっと着いたよ!久しぶり!待った?』
そんな飼い犬特有のスマイルで息を切らしています。
『この犬、知ってたか、な?』
人懐っこい犬の頭を撫でていると、飼い主が遥か遠くの家から、田んぼの中を追いかけてきて、
『ハーネスが外れてしまって!ごめんね!驚いたでしょう』
そう言いながら白い犬を回収していきました。
『知り合いの犬?』
『いいえ。飼い主さんも、あの犬も知らないです』
この『久しぶり!元気かい?待ってたよ!』風な、見知らぬ犬のリアクションは今現在も続いています。
◇◇◇◇◇
【坂道スライド】
N県の有名な神社のお札を神棚へお招きし、しばらくすると、前にH県でお世話になっていた神社から
『〇〇神社をお祀りしているなら、うちの神社のお札やお守りはお返しいただき、今後は〇〇神社にご参拝ください』
と、神社の事務方から電話がかかってきたことがあります。
もちろん、神様同士の相性もありますので、以前お祀りしていた神様関係のものは清めてきれいに片づけ、今までお世話になったことへ感謝をしながらお返ししました。
お招きする神様を変えたのはこれ1回きりなので、どれくらいの件数をお互いに把握しているのかわかりませんが、神社同士のつながりやネットワークはあるのだなと思いました。
※※※※※
N県の神社へ五月になると行くことが多く、足を運ぶたび、藤の花が満開で良い香りに包まれます。
参拝を済ませ、最後、出口のほうから一礼してゆるやかな坂道を 足早に進もうすると、左側へザッと足が10センチほど滑りました。
その日は雨模様だったので、地面が湿っているのだなと思い。そのまま無事に帰りました。
その後、参拝は滞ることなく、巫女さんの舞いなども見る機会に恵まれましたが、二年目の帰りの坂道でまた左側へ足が横滑りしました。
三年目の時、さすがに気を付けてゆっくり歩きながら、“あ、これもしかして”と感じて両足に力を入れたのですが、三度目のスライド。
特に足腰が悪いわけではないです。
隣にいたNちゃんにも『ずっと滑ってませんか?』と言われ、転倒するようなことはなかったのですが……。
せかせかと生き急いでいるので、『急がず、ゆっくり帰りなさい』の意味かもしれません。
◆怪談詰め合わせ◆〔ふしぎ編〕 茶房の幽霊店主 @tearoom_phantom
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