美しさと恐れが溶け合う、冬花たちの咲く場所で
- ★★★ Excellent!!!
山の奥深く、静謐な空気のなかに漂う冬の花たち――その一輪一輪に、遠部右喬さんの紡ぐ物語は息づいています。『冬花語り』は、ただ美しいだけでなく、どこか妖しく、時に胸の奥をじんと締めつける情念が潜んでいる短編集。
枇杷の花が香る山道での小さな裏切り、侘助に託した罪と救い、紅梅と白梅が織りなす伝説のような愛と恐れ――どの物語にも、人ならざるものと人の境が曖昧に揺れ、読者はまるで雪の積もる森を迷い歩くような、心地よい緊張と静けさに包まれます。
とりわけ、擬音や風景描写の巧みさが、物語世界をより鮮やかに、五感で感じさせてくれました。ひと時の静寂のなか、凛と咲く冬の花とともに、あなた自身の心の奥に眠る“何か”と出会えるかもしれません。
美しさに囚われ、哀しみに溶ける魂たちの営み。その儚くも鮮烈な情景に、あなたもそっと触れてみませんか。