花を識り、人を識る。
- ★★★ Excellent!!!
幻想的で美しい…と見せかけて、恐ろしい
情念を紡ぐアリアドネの様な作家である。
その巧緻に紡がれた糸は、数多の目を
心を捕らえて離さないのだろう。
冬の花、と聞いて枇杷を思い浮かべる者は
そうはいない。又、侘助や梅に至るや
花が齎すイメージとは又違った話を
創り出す。
扠。
仲の良い歳の離れた男女の山歩きから
枇杷の木を見つける。彼の枝に鬼遣らいの
効果がある事を識る者は少ない。
また、侘助とは藪椿の一種で、好んで
茶席に飾られる。元は茶から派生したこの
椿は、いつも花首を俯かせている。
梅は百華の兄と謂われ、どの花々よりも
いち早く咲くという。その高潔は、寒い
冬を耐え忍んでこそ。
花を生ける様に紡がれる幻想譚は、その
花を識るからこそに鮮やかに生きる。
人を識り、怪異を語る。
その妙味を、とくとご覧あれ。