そらとどけるクレーン
霜月あかり
そらとどけるクレーン
町の工事現場には、大きなクレーン車が立っていました。
青い空に向かって、長いアームをぐんと伸ばしています。
毎朝、そらくんは幼稚園に行く途中、このクレーンを見上げるのが楽しみでした。
「わぁ、今日も空まで届きそう!」
クレーンは町のビルを建てるために、大きな鉄骨を持ち上げていました。
ぐいーん、ぐいーん。
重たいはずの鉄骨も、クレーンが持つとまるでおもちゃみたい。
そらくんは思います。
――もしこのクレーンが、お月さまをつり上げられたら?
夜空から月をおろして、みんなで丸いおもちみたいに分け合えるかも。
――もしこのクレーンが、雲をひっぱれたら?
ふわふわのベッドをつくって、お昼寝できるかも。
――もしこのクレーンが、虹をつかめたら?
空の上に橋をかけて、星の国へ遊びに行けるかも。
そんなことを考えると、胸がわくわくしてたまりません。
ある日、工事のおじさんが声をかけてくれました。
「クレーンに興味があるのかい?」
「うん! なんでも持ち上げられるんでしょ?」
そらくんの目はキラキラ。
おじさんは笑って首を振りました。
「なんでもってわけじゃない。クレーンはとても強いけど、重たいものをやさしく動かすのが仕事なんだ」
その日、そらくんは見ました。
クレーンが大きな窓ガラスをゆっくりと持ち上げて、ビルの壁にはめこんでいくところを。
ガラスはキラキラ光りながら、ぴたりと収まりました。
「すごい……! 強いのに、やさしいんだ!」
そらくんは思わず拍手しました。
家に帰ると、お絵かき帳に大きなクレーンを描きました。
アームの先には、鉄骨やガラスじゃなくて――お月さまや虹や雲がぶら下がっています。
「ぼくもいつか、空まで届くクレーンを動かしたいな」
窓の外では、本物のクレーンがまだ夜空に向かってのびあがり、まるで星をつかもうとしているように見えました。
そらとどけるクレーン 霜月あかり @shimozuki_akari1121
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