女神　カクヨム短歌賞1首部門＃10

このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む（555文字）

現実と幻想、自由と束縛、過去と未来が交錯する深い寓意に満ちた短歌連作です。

自由の女神や「メイクアメリカグレートアゲイン」など、社会的・文化的な象徴が一つ一つ独特な視点で描かれているあたりに、反骨的なエネルギーを感じます。

加えて視覚的なイメージが鮮やかで、時には無力さや切なさを表現しつつも、力強いメッセージを発信しているように思えました。

終わりと始まりが入り混じるような、非常に印象的な作品群です。

これを読んでいるとどこかに行きたくなります。

　私は短歌というものにあまり適性がなく、今までよく分からないと言った印象を抱いていたのですが、この歌からはとてもストレートに短歌としての魅力と良さが伝わってきます。
　ちょっとした視点の転換で、自由の女神やトランプ語録など、一見日常的なニュースやネットのタイムラインに溢れているような言葉に、それがまるで異世界に変わってしまったかのような驚きと抒情が宿っていて、シンプルな言語表現なのに奥深いなと感心しました。
　初めて短歌っていいなと感じさせてくれた歌でした。

カクヨム短歌賞【ナツガタリ'25】（1首部門）、今回のコンテストのまるでトリを決める様に放たれた滝口アルファ様の短歌となります。

現代短歌の代表のひとりである穂村弘氏が、短歌を評する時に「共感と驚異（シンパシーとワンダー）」という言葉を使われます。私は正にそうだと思っています。現代短歌において、口語体による「わかりやすさ」、そこだけに着目してしまうと陥ってします「罠」の抜け出し方を的確におっしゃっていると思います。

さて、本作において滝口アルファ様は「自由に詠んでみました」と書かれておりました。

ここまで幾つもの歌を詠まれてきた筆者様が、最後に肩に力を入れず、軽やかに、のびのびと、ただ…続きを読む