美しい「死と再生」の物語

三つのエピソードがそれぞれ独立した短編集。
しかし連なって読むと、それらはひとつの大きな弧を描き、読者を極限の恐怖から、深い陶酔、そして思いがけない境地へと自然に導いていきます。

広大な宇宙という静謐な背景と、ひとりの人間の心。
その二つしか存在しないのに、読み進めるほど広がる世界。
宇宙描写と心理描写が溶け合い、心の震えが光や闇のイメージに重なっていく様子が、魂の寓話のように響きます。

物語が最後に差し出す「選択」は、私たちの胸にも静かに問いを投げかけてきます。
孤独とは何か。
美しさとは何か。
そして、私たちはまだ見ぬ明日をどう迎えるのか――

壮大な宇宙を旅したような解放感と、ひとりの人間の心に寄り添ったあたたかさに満ちた読後感でした。

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