三つのエピソードがそれぞれ独立した短編集。
しかし連なって読むと、それらはひとつの大きな弧を描き、読者を極限の恐怖から、深い陶酔、そして思いがけない境地へと自然に導いていきます。
広大な宇宙という静謐な背景と、ひとりの人間の心。
その二つしか存在しないのに、読み進めるほど広がる世界。
宇宙描写と心理描写が溶け合い、心の震えが光や闇のイメージに重なっていく様子が、魂の寓話のように響きます。
物語が最後に差し出す「選択」は、私たちの胸にも静かに問いを投げかけてきます。
孤独とは何か。
美しさとは何か。
そして、私たちはまだ見ぬ明日をどう迎えるのか――
壮大な宇宙を旅したような解放感と、ひとりの人間の心に寄り添ったあたたかさに満ちた読後感でした。
非常に詩的で、感動的な物語。
「絶望の先の陶酔」というのが、静謐ながらも力強く伝わってきます。
思春期の「誰にも理解されない深淵な闇」と、現在の「漆黒の宇宙」を重ね合わせることで、過去の傷や悩みが、この上なく広大な空間で肯定され、浄化されていく様子が感動的です。
「音のない世界」「冷たく美しい闇」「肌を刺すような冷たい光」といった表現により、無重力空間の感覚が読者にもリアルに伝わってきます。
すべてを手放した場所で初めて自分を見つけるというパラドックスが、この物語の核を表していると感じました。
究極の孤独の中で、逆にすべての存在との繋がりを見出すという、哲学的な美しさがあります。
2話目まででも確かに美しく完成されています。
3話目まで読むと、主人公の我儘の昇華が感じられ、生と希望としてのドラマとして完結して、とても綺麗です。
短い話の中に繊細な人の心が感じられました。
読む価値アリです。