創作の原点を思い出させてくれる物語
- ★★★ Excellent!!!
一枚の絵をめぐって描かれる、二人の画家の物語。
華やかな成功と静かな孤独、世間の評価と個人の信念。
その対比の中で『芸術とは何のためにあるのか?』という問いが、静かな文章で語られます。
作品が、誰かにとっての『お気に入り』(=My fav)になれるかどうか。
世界に評価されるかどうか、時代に名を残すかどうかよりも、ただ一人の心を支え、ただ一人に愛されること。
その小さな『お気に入り』が、作り手にとって生きる支えになる。
そんな真実が、物語の芯に流れているように思いました。
読み進めるうちに、創作に携わる者としての自分自身のことを考えさせられます。
評価や数値で測れる物差しではなく、どこかの誰かが「好きだ」と思ってくれること。
それが作品にとって、そして創り手にとって、どれほど大切で尊いか。
読後の余韻はとても静かで、そして確かに心を震わせます。
自分もまた、誰かの『My fav』を生み出すために書き続けたい。
そう思わせてくれる物語でした。