錆びることのない研ぎ澄まされた名作

あらすじの時点で面白いことは分かってました。
そして一気に読み終えた今、想定していた面白さを超えた魅力を見せつけられ「レビューするのも逆に失礼なんじゃないかな」とよく分からない精神状態になっています。

錆に覆われた世界で生き抜く人々の物語。ファンタジー的世界観に思えましたが、そのバックグラウンドにあるものはSF的で、ダイイング・アースの系譜にあると思いました。
緻密な設定で土台が固まっていながら、展開は王道ファンタジー的でもあり、クロウがヒーローのように登場する度に胸の熱くなる思いでした。
最初は登場人物達が皆ドライでクールにも思えましたが、5章辺りから特にそれぞれの人間性が垣間見え、とても魅力に見えました。……と、思ってからの終盤の怒涛の展開。読めば読むほど面白さが溢れてくる作品でした。

過酷な環境の中でも、それでもしぶとく生きる素晴らしい生命の物語でした。たとえこれから何年、何十年経とうと、読んだ人に変わらず『面白い』と思わせる作品だったと感じました。決して錆びつきはしない、不朽の名作ネット小説なのではないでしょうか。

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