クズな勇者による有難いレッスン

正義感に溢れ、誰よりも優しく、勇気を持って悪の魔王と戦う存在、いわゆる勇者。
そんな平凡な勇者はこの作品には居ない。
絵に描いたようなダメ男を体現する性悪勇者に、正義に固執する自称美少女勇者、常識人ながらもビビリで元ヤンな令嬢勇者、不思議系クール女子な勇者…などなど、主要人物だけ取っても曲者揃い。
この作品の勇者たちが取る行動は決して賛美されるようなものだけではない。しかしながら彼らは単なるクズでは終わらないのだ。
彼らは皆それぞれに譲れないものを持っており、それこそが「クズ以下の存在」とは一線を画している要因だ。

そしてまた主人公である「ヤシロ」の能力は、同時多発的に起こる戦闘や瞬間的な動作を一人称で書くことにおいて、この上ない理由付けとなっている点にも注目したい。
その上で登場人物が「動く」物語を読むのも面白いのではないだろうか。あとはお供にビールとピザ、それから餃子も忘れずに。

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