昆虫愛が溢れる新感覚ミステリ

個性的なキャラクターと虫が渾然一体となって活躍する異色ミステリ。

「昆虫」という一般受けはしなさそうな素材を誰でも楽しめるライトミステリに仕立てあげた技量に感服しました。

驚かされるのは専門知識の量です。資料と格闘しながら執筆されたとのことですが、そんな苦労を伺わせず、さも当たり前に書いているように見せてしまうのは筆力と、作者様のもともとの学識のなせるわざなのでしょう。

物語の主人公であるモッさんにとって、虫はあくまでも研究対象。異形の虫の調査を依頼された彼は探偵としてよりも、むしろ学者として事件と向かいあいます。事件のせいで研究が遅れて不機嫌になったり、パニックをよそに虫に埋もれたいと密かに思ったり、研究に支障が出てはじめて解決に向けて腰を上げたりします。世界が滅亡しても彼は虫の研究を続けることでしょう。学者はこうでなきゃ!

異形の虫の大発生という、虫系ホラー映画を彷彿とさせるシーンで幕を開けるこの物語ですが、昆虫が苦手な方でも楽しめますので、読んでみて下さい。ハマリます。

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