すべて、頭の中も、彩りも、真っ白になるような鮮烈な愛。
- ★★★ Excellent!!!
真っ白な苺、それは本文中で出てくる印象的な背景だ。私はそこに、ダブルヒーローの一人(誰とは言うまい)の鮮烈な愛の姿を感じる。あれはきっと、彼そのものの姿だった。
この作品の魅力は、他の方が殆ど語ってしまっているので、私は私自身がこの物語に感じた萌えを語ってみたい。
まず、沼地という舞台。醜い、あるいはブスなヒロインが主人公の恋愛小説なんて腐る程あるが(と言っても、ドロテアは本当はブスではない)、この物語の特徴はなんと言ってもそれを沼地……しかも皆から疎まれるような汚水……を舞台にしているところだ。そこでドロテアは、父の名誉のため、己のため、誰にどんな罵倒を受けようと沼を浄化しなければならない。あらすじにある通り、八方ふさがりの多重苦に悩まされるドロテアの救いの手となるヒーロー・ウルバーノ。次第に明るみになっていく彼の不器用さと優しさ、抱えているものに読者が惚れないはずがない。ドラゴンの脳腫瘍、天使の設定、どれも常人には思いつかないはっとさせられる素晴らしい世界観である。ラミラとドロテアの女子トーク(?)も微笑ましい。
物語は沼地の霧が晴れるように少しずつ希望を見せる。やがてドロテアは借金という苦から解放される……!というところで、ある真実を知るのである。ずっと守られていたこと。奪うために与え、与えるために奪われていたこと。あまりにも鮮烈な物語、愛情に、体が震えた。ぜひ冒頭の魅力に捕まって、最後まで走り抜けてほしい。そこには、結局どちらを愛せばいいのか、途方に暮れるあなたがいるだろう。