読めばあなたも行きたくなる

貴重な砂糖をたっぷり入れて飲む紅茶と、こだわりのお菓子を楽しめる喫茶「のばら」。そこへ訪れる様々なお客たちの物語と、合間に挿しこまれる店主夫妻の謎多き過去が絶妙なバランスで、なんとも不思議な読後感がある。最近はやりのほっこりあったかな人情ものと見せかけておいて、実は隠し味にシリアスな愛憎劇が仕込まれている…のかな?今後の展開によってまだまだ評価の変わりそうな作品。
今のところは、料理文化の壁を描いた『ミント茶に砂糖』が一番好き。フランスでココアを頼んだら角砂糖がついてきてびっくりしたのを思い出した。ただ単に美味しそうな料理の描写を並べているだけでなく、お客さんがそれぞれに持っている食事へのこだわりについて描いているところがこの作品の素晴らしいところ。美味しい料理だって、食べる人によっては口に合わないことだってある。けれどそれもまた料理の楽しみ方なのだと改めて気づかされた。
次はどんな料理が出てくるのかな。ああ、「のばら」に行きたくなってきた!

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