★★底辺から這い上がるのがヒップホップ

 何も持ってない主人公が、さらに色々な物を無くし、そして新たに得、栄光を掴み取ろうとするお話。ストーリーもさることながら、地の文が秀逸だ。描写が詳細なのに、余計な文がない。的確な比喩がリアリティを与えている。
 ラップに全く興味のない僕でも楽しめた。馴染みのない音楽だからビートには乗れないのだけれど、歌詞が韻を踏んでいることはわかる。こんなの即興でどんどん出てくるなんて、ものすごい頭の回転の速さだ。ヒップホップに持っていた怖いイメージは完全に払拭された。
 ただ、エピローグは蛇足だと思う。最終話の余韻に浸っていたかった。

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