ページを繰って幻想異郷を旅すれば、そこに生きる人々の息遣いが感じられる

私はファンタジーを「使い勝手のいいガジェット」だと
とらえているようだ、ということに、不意に気が付いた。
戦闘なり魔法なり何なり、場面を派手に演出するために
物語にファンタジー要素を絡める、という書き方ばかり。

そうではないハイファンタジーにまともに出会ったのは、
実は、カクヨムで読み始めてからのような気がしている。
子供時代の読書は現実ベースのローファンタジーが多く、
ハイファンタジーはゲームで覚えたから戦闘は付き物で。

派手な戦闘や魔法の登場しないハイファンタジーは佳い。
幻想異郷と呼ぶべき世界で旅に生きる人の静かな物語は
特にいとおしくて好ましい。ここではない世界の日常が
ひっそりとした息遣いとともに目の前に展開されていく。

ウェブ小説で長らくトレンドの異世界ファンタジーは、
転生、転移、チート、ハーレム、駄女神、悪役令嬢と、
キラキラしてカラフルでノリノリで楽しそうだけれど、
どうもうまく馴染めずに、私は静かな幻想異郷を探す。

佳い作品を読ませていただきました。
『木樵の王』がいちばん好きです。

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