概要
全てを失っても、守りたいものがあるから
両親の死をきっかけに、田舎に越して生活する万里 凪《ばんり なぎ》は、仲の良い羽田《はた》夫婦の晩餐に招待された帰り道で、狼のような小型の犬に出会う。
傷だらけのその犬の治療を町の獣医師、玉城《たまき》に依頼し治療してもらったところ、その犬は万里の家に居ついてしまう。万里はその犬に銀之助《ぎんのすけ》と名付け、共同生活を送るのだが・・・
傷だらけのその犬の治療を町の獣医師、玉城《たまき》に依頼し治療してもらったところ、その犬は万里の家に居ついてしまう。万里はその犬に銀之助《ぎんのすけ》と名付け、共同生活を送るのだが・・・
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!素直に偏屈、でも優しくて暖かい。
どの登場人物も素直でなかったり、ひねくれていたり、なにかを隠していたりする。それがおかしくて、親しみを感じさせた。ちょっと不思議な領分に片足を踏み込んだ世界観は、古めかしく軽妙な語り口がとても良く合っている。
悲劇を境に人間が変わる――という物語は多いものの、主人公たる万里凪は己の性質ゆえに悲劇を招き、それを経験した上で、それを更に極めねばならないと思っている。それでいて物語の中盤まで悲劇を臭わせないところに、自己陶酔を完全に超えた悟りのようなものを感じた。
痛々しいまでの空虚を抱える彼に訪れたのは、後に銀之助と名づけられる犬だ。すべて読んだあとに銀之助の初登場の箇所を見返してみると…続きを読む