想像力を求められない小説など存在しないと思います。
しかしSFに限っては、ある程度現実世界の延長線上に軸がなければ
白けてしまいます。
可能そうにみえてまだ不可能なこと、不可能そうに見えてもしかしたらできるかもしれないこと、そんな空想の先にある世界をいかに魅せるか。これがSF作品の妙ではないかと考えています。
本作は、とてつもなくアグレッシブな世界観ながら、SF作品としての軸がしっかりと根付いており、何気ない描写にさえハラハラさせられてしまうかのような臨場感があります。加えて各登場人物の設定や背景をしっかりとおさえており、読み応え抜群です。
既に書籍化がなされ、多言する必要性もないのでしょうが、完成された物語として一読する価値が多いにある作品です。
書籍版を読ませていただきました。
「横浜駅が無限増殖する」
そのキャッチだけ見ると、いかにもWebでバズりそうなキーワードで、カクヨム初期の頃から興味を引かれていました。でも読んでみて分かったのは、そのキャッチーさが評価されていたわけではないのだな、ということ。
書籍版のカバーイラストをすでに把握されてる方も多いと思いますが、ラノベレーベルには珍しく登場人物が全く目立たない、横浜駅の異常さが際立った背景イラストになっています。作者様の要望もあってこういったデザインになったとのことですが、設定の細部までにこだわり、キャラクターよりも世界観を作り込まれた本作には本当にぴったりのデザインなのだと思います。
Web発作品だからと侮ることなかれ。
内容はかなり濃厚なSF。専門用語も多々出てきて、事情通の方にとってはアドレナリンがドバドバ出てくることでしょう。単純に専門用語を並べるだけじゃなく、それが作者様オリジナリティ溢れる世界観に作り込まれているのが本作の最大の魅力だと思います。
Web小説にはキャラクターの魅力やストーリーの痛快さではなく、こういう戦い方もあるんだと、新しい価値観を世の中に示していくようなそんな作品。
ぜひご一読ください。
ネップシャマイ好きだ。