待ち時間にオススメ!

  • ★★★ Excellent!!!

横浜駅が増殖する。日本を覆う程に。
これだけでもインパクト十分であるのに、読みやすくキレのある文章がその後を掴んで離さない。
まるで新聞小説を読み進めているかのようであり、一日一話でも、一気に数話読んでもまったく疲れない。

SFもの、異世界ものの小説にありがちな「世界観の列挙」がない点は特筆に値します。
アウトサイダー的存在である主人公を通して、必要に応じて横浜駅の様相を見せる手法が、世界観の理解に苦心する事なく読み進められて素晴らしい。
「未知なるもの」に対しての「人間」を描くのがSFだとするならば、本作はまさしく骨太なSF小説であるという事ができるでしょう。

ぜひ電車の待ち時間に読みたいと思いました。
読みふけり、ふっと顔を挙げた時、目の前がエキナカに覆われている…。
そんな妄想さえできてしまうような、駅地下のひんやりくぐもった空気感を感じられる良作です。

余談ながら、私は横浜駅がどんなかを知らないので、読みながらのイメージは上野の東京メトロだったりします。

それを踏まえて。
あなたの「増殖する駅」はどこになるでしょうか?

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