その部屋には宇宙があった

「あたしな、あんたのこと、好きなんや。だから今夜、ここに泊めてな」
深夜、突然、私の部屋に来た森みどりは言った。そこに返答の余地はない。
これは不甲斐ない私の回顧録だ。人生には、時として、自分の意思を押し通すことも必要だ。これだけははっきりと言える。自分を殺すことは決してやさしさではない。
22才の私は、九州にある水族館の飼育員となった。そこで私は２人の女性と運命的な出会いをする。１人は森みどり、もう１人は川田律子。性格も姿もまったく対照的な２人だったがどちらもとても魅力的な女性だった。若い私は仕事そっちのけで恋愛にうつつをぬかしていた。私は、本当は律子のことを強く愛していたにもかかわらず、結局、森みどりに押し切られる形で結婚を決めたのだった。優柔不断だ。それがずっと先の未来にまで大きな禍根を残すことになるのに。