真っ直ぐでありつつも荒々しい裏の人格を宿した少年に、医者の卵のインテリ少女。危なっかしい2人を支えるのは、優しく情に厚い友人たち。そうした男女4人が青春の日々を過ごしていたところに、巨大な組織が巻き起こす不可解な事件の影がちらつく。
こうしたあらすじだけ見れば、高校生たちの青春ライトミステリーを連想するかもしれません。しかし文章はかなり硬派。ライト層とは一線を画す重厚かつ精緻な文体だと思います。
世界の描き方も非常にリアリスティックで、語られる内容の知識レベルかなり高め。作者様の医療知識に裏打ちされた描写は完成度が高く、安っぽさなんてどこにもない。そして、そうした文章にありがちな「とっつきにくさ」がない点が特に素晴らしいと思います。説明がうまいから情報が頭に入ってきやすいのです。
他のレビュワーの皆様も述べておいでですが、作者様の知識量は尋常では無い事が分かります。
言葉選ばずで申し訳ない限りですが、本音で語らせてください。
最初見た時は、「うわ、情報の羅列できついわー」と感じました。
一文が長く、不必要な情報に、思考がジャミングされる事もしばしば。
ですが、ページをめくるたび、知的好奇心が満たされていくのです。
用語をwikiで調べたり、画像を検索したり。
医療用語ってこういうものなんだ。へー、こんな病気あるんだ等々。
Web小説でここまで没頭したのは初めてです。
書き手と読み手の知識の擦り合わせ作業、とでも言うべきでしょうか。
内容についていくのが面白いのです。
銀鏡 怜尚 様の次回作を楽しみにしております。
3/31 読了 おいげん