飲み屋でバカ騒ぎしながら話を聞いているような、泣けて笑える一作

技巧派バンドとしてメジャーデビューするも、売上不振で無職になった四人組バンドが、メキシコでの出会いをきっかけにメンバー増員して五人組覆面バンドとして再デビュー。
筋トレ、馬鹿話、乱闘、曲作り……いろいろな困難を乗り越えながら(自分で呼び寄せたものも含む)、全米No.1や東京ドームライブを目指すというお話。

山あり谷ありの音楽業界でのいろいろについて、
「あの時、こいつがこんなことを言ってこうなった」
「あいつがあんなこと言ったから、おれはこうした」
「美人社長のパンティーが見えた、色は……」
と、ものすごく話のうまい兄ちゃんから飲み屋で話を聞いているような形で進んでいくので、気がつけばマスク・ド・ファイブが好きになることでしょう。

音楽ものでいちばんむずかしいのは「盛り上がったライブ」をどのように表現するかだと思います。この作品では、デルフィンの主観にフォーカスして、エモーショナルな盛り上がりを表現して、「楽しそうなライブだな」「この人達にとってはこんな意味のあるライブだったんだ」と伝わるものになっているのがすごいなと思いました。

悲しくて切ないんだけど、笑えてくるような。笑いに振っておいて、泣かせにくるような。マスク・ド・ファイブの姿勢やマリエさんとの関係がしっかり話の芯になっていて、グッときます。