第31話 プロキシーファイト②

「プロキシーファイト…それは委任状合戦のことを言うんだ。」

オレはミサキに言った。

「委任状合戦?」

ミサキはハテナの表情でいる。

「委任状合戦は株主総会で自分と同じ意見を持つ者の代表に委任させることを言うんだ。」

「そうすると、どうなるのです?」

「委任状で議決権の代理行使することによって、利点が結構あって、まず、株主総会に行けない株主がいる。その株主と同じ意見を持つ者どおしで片方の者に自分の分の議決権を委任することにより、自分は株主総会に行けなくても、代わり者が議決権を行使してくれる。さらに、経営陣から考えても利点があって、株主総会にたくさんの株主が来ては困る。それは、株主総会の潤滑な運営に支障をきたすし、何しろ、たくさんの株主たちが来ては会場のセッティングに苦労してしまう。だから、自分と同じ意見を持つ者に議決権を代理行使、つまり、委任してもらうことによって、株主側、経営陣側が最小限度の者の数で株主総会が行えることが良いことなんだね。」

「そうなのですか。勉強になります。私は、そんなことさえわかりませんでした。」

ミサキは感心しつつも、どこか悲しい表情をしていた。オレは


「ミサキ、そんな悲しい表情しなくて良いんだよ…。最初は誰でもわからない。それはしょうがないんだよ。けど、今、学んだ。そこに意義があるんだ。次にいかせるときは必ずある。その時までにさらに磨きをかければいいんだ。だから、そんな表情しなくて良いんだよ。」

「はい。わかりました…」

「とりあえず、ここを出るね。本当にトキワに殺されそうだから…」

「………はい!!」


       *          *          *


朝になり、オレは客室から出る。(こっそり、客室に逃げ込んだと言っていい)その途端、

「シヅッチ!おひさ~。」

「おお~ヤワキン!元気してた?」

「うん。元気。元気ってあまり日数経ってないじゃん。」

「そうだな。」

「ところで、姉さん。どうだった?」

「大丈夫みたいだよ。」

「よかった~。」

なんだかんだで、ヤワタ、姉さんにやさしいね。

「とりあえず、朝ご飯食べよ。」

とヤワタが切り出すが

「ごめん。トキワいるんでしょ…多分、オレ殺されすよ…」

「なにしたの?」

「何もしてません!!」

オレは威張るように言う。

「じゃあ、大丈夫じゃない?」

「いや~ね…軽く、悪口は言ったよ。」

「そんなことで、ガッツリ怒るトキワではないよ。もう、忘れてるよ。」

「本当?」

「本当。本当。」

「じゃあ…行く。」

オレは内心、半信半疑で言った。


そして、リビングに着くと、トキワが

「た・か・し!!」

「はい!!(ヤワタ、後でコロス!)」

「朝食の準備出来てるわよ。私が作ったの。」

「トキワが作ったの?」

「そう。」

「大丈夫?」

「なに、その答え!?」

「いいえ。何でもありません。頂きます。」

「よろしい。」

トキワは本当に怒ってないようだ。助かった~。けど…この朝食大丈夫なの?ミサキみたいな感じになってないよね。ヤワタが真剣な表情で

「大丈夫だ…ボクは食べたことがある。心配しなくていい。」

「よかった~。では、いただきます。…パク」

「うっっっっま~い。」

「よかった。」

トキワは安堵した表情だ。

「トキワ、料理できるんだね。しかも美味いし…」

「えっへん!!どうだ!まいったか!?」

オレは頭を下げ

「おみそれしました。」

「さあ、どんどん食べなさい。」

「うん。そうする。そう言えば、ミサキはまだなの?」

「そうだね。もう、起きていいはずなんだけど…」

ヤワタがミサキのある部屋の方を見て言う。

「おはようございます。」

ミサキが階段から降りていく。

「姉さん。珍しく遅いね。」

「ヤワタ。おはよう。少し寝坊しちゃった。」

「たまにはいいんだよ。」

「ヤワタには言われたくないわ。」

「姉さん。ひどい!」

ヤワタは泣きながら言う。リアクションが大げさなんだよ。

「姉さん。おはよ。朝食出来てるわよ。私が作ったの。」

「トキワが作ったの!?珍しいわね。頂くわ。」

ミサキも入って、久しぶりにみんなで食べる。たわいもない話をしながら食べるのがいい。これがオレが理想とする食事だ。今まさに、それがある。う~ん。考え深い。


 食べながら、ヤワタが言う。

「ところで、またセカンド・リテーリング社に行くんでしょ。今度はシヅッチ連れて。」

「そうね。」

ミサキが簡単に言う。

「じゃあ、ボクも連れてってよ。」

「なんで?」

「この前、ボクも一緒に行ったでしょ。だから。」

「今回は、私と隆史さんだけで行くわ。」

「え~~~~~~~」

ヤワタがジタバタする。子供か!!

「だだをこねない。」

オレは

「ヤワタも一緒に行ったの?」

「はい。ヤワタの知り合いが依頼された会社でして…」

「ヤワキン、その会社の誰と知り合いなの?」

「もちろん。社長。」

「ヤワキン。あなたの顔の広さに私、ビックリです。」

「あははははは。」

そこにトキワが

「私も行く!!」

ミサキが

「だから、ヤワタ、トキワが行ったら大変なことになるわけ!」

「いいじゃん。別に。」

トキワがふてくされた表情でミサキに言った。あれ~この表情、日本のどこかの芸能人沢尻なんとかさんみたいだな~

オレは

「いいんじゃない。みんなで行こうか。」

ミサキが

「大丈夫ですか?」

「大丈夫。大丈夫。」

「さすがシヅッチ。ボクもシヅッチがどう出るか気になるんだよね~」

「私も、ちょっと気になる。」

トキワも気になってるんだ…

ミサキが

「しょうがないですね…では、みんなで行きますか!」

「姉さん。わかる~。」

トキワが姉さんに抱きつく。

「ちょっと、トキワ。抱きつかないで。」


オレはミサキとトキワをみて思った…ミサキ、トキワだけの題材にした4コマ漫画見てみたい…グヘヘヘヘヘ


そう考えているとヤワタが

「シヅッチ、なんかエロいこと考えていた?」

「いいえ……ごめんなさい。考えてました。」

それを聞いたトキワが

「たかし~。ちょっとこっち来て~。」

「かしこまりました。」

ミサキは赤くなった表情でいる…


オレとトキワは部屋を出て、廊下へ行く。


”ドス!” ”ドス!” ”ドス!!”


鈍い音が鳴り響く…


これから、セカンド・リテーリング社に行くのに、もう、死にそうです………

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日本の法律を魔界に適用したらこうなった タガミ ケイスケ @tagami

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