郷愁を覚える古い年に、盛夏に田舎の退屈な家屋から畑に行き……「逃れられたね」。話を聞いた人は慰めるように言うでしょう。不思議で大変な目に遭ったけど、もう終わったのだと。しかし体験した当人の思いは違います。終わらない。出られない。正に迷路。纏わり付かれることは、読者も同じ。絡め取られる。歩けども出口は無し。
夏の光景が瞼の裏に浮かんでくるような繊細な描写で没入感高いです!夏のなんでもない一日かと思いきや、いつの間にか、境界を越えている。しかし、どこから迷い込んだのかわからない。オチがめっちゃ怖いです💦ひんやりしたい方におすすめです!
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小学生の夏休み、祖父母の家を訪問している最中。あるいは郷里での出来事を思い起こさせるような、誰もが心に抱く『懐かしく風情ある夏』の描写から始まる本作。主人公が母との約束を悪意なく破ってしまってから、状況は一変する。向日葵らしからぬ向日葵。母の姿。あなたは、“私”は、何者か。不思議で不気味な夏は終わらない。
あれはいつの事だっただろう。どこであった事だろう。母に連れられて赴いた夏の玉蜀黍畑は、まるで緑の迷路だった。つい言いつけを忘れて迷路を突き進み、行き当った畑のかなたには。無数の向日葵が立っていて――その足元には。幼き日、虚実さえも定かならぬ――ただ、夏の太陽の影となって、向日葵の顔が暗くこちらを見下ろしている。
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向日葵畑を歩きながら主人公は幼い頃の思い出を回想する。母の実家にいて、母と玉蜀黍畑へと行き、そこで・・・どこからが幻で、どこからが現実なのか。そもそも最初から現実などないのか。そして、この夏は本当に終わるのか。この迷宮に出口はあるのか。
夏の日の記憶は何処か曖昧で、それでも母に連れられてトウモロコシ畑へと。 ボロボロの図鑑が数冊と何やら難しそうな本が詰まった本棚、空気の抜けたサッカーボールにトランプ。 母の 実家 だと説明されたその家は真夏の日差しに焼かれながら、夏野菜畑と沢山の向日葵達に囲まれた森の奥にある。 母の指に嵌った、赫い石の指輪。噎せ返る腐臭の中で、向日葵の根に嵌っていた、玆い石の指輪。 悪夢から逃れて、漸く辿り着いたのは病院で、自分はひと月行方が分からなくなっていたという。 真夏の悪夢を思い起こせば 土の上に項垂れる向日葵の顔。
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灯虫たちの走光性炎にも飛び込むその習性向日葵たちに羽根があれば、太陽へと飛び込み向かうのだろうかそんな向日葵に魅せられた幼子は、きっと太陽のように輝く未来が眩しいのだろう闇の中に燦燦と燃え滾るソレは、闇々にとって標であり活力である熱い夏の日遠い思い出手を取るべき信頼なる存在は同じ太陽かそれとも、深淵か……
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