概要
突如としてネット配信された、ある脳外科医の「死の遺言ビデオ」。
日本有数の高級サナトリウムで、老医師は認知症の妻を抱きしめたまま息絶えていた。
なぜ彼は妻とともに死を選んだのか。
配信された告白は、認知症介護、尊厳、生きることと終わることの意味を社会へ問いかける。
だが数か月後、その問いは何一つ答えを得ないまま忘れ去られていく。
そして、その遺志を見届けたもう一人の医師が動きだす。
これは、一組の夫婦の美しい最期の物語であり、
ある「答え」が生まれるまでの物語である。
【初見の方へ】時短ルートを御用意しております
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おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!誰も悪人ではないのに地獄が続く……介護の現実を抉る傑作サスペンス。
美しい理念を掲げる介護施設と、そこで浮き彫りになる現実の歪みを冷徹に描いた社会派サスペンスの傑作です。
認知症介護の限界、追い詰められる家族、そして善意の制度が孕む構造的な矛盾へと容赦なく切り込んでいきます。
本作の白眉は、勧善懲悪では決して片付けられない重層的な人間描写です。
正義感を胸に行動する主人公、一切のブレを持たず自らの信念を貫くキーパーソン、そして親を愛しながらも精神を摩耗させていく家族たち。
登場人物の誰もが怪物ではなく、それぞれの持ち場で懸命に生きているからこそ、逃げ場のない葛藤と圧倒的なリアリティが胸を締め付けます。
物語が進むにつれて読者が突きつけられるのは、単な…続きを読む - ★★★ Excellent!!!純白の善意が問いかける、愛と尊厳の終着点
介護にすり減る家族の現実と人間の尊厳という重たい命題へ、神山達也と園崎宗一郎の二人の医師を通じて真正面から切り込んだ息を呑む社会派ドラマでした。
耐圧カプセルやラベンダーの芳香といった巧みな設定が、外傷を残さず美しく終わらせようとする狂おしいほどの慈悲と重なり合って胸を締めつけます。
命を繋ぐことだけが正しいのか、壊れゆく愛を前に人は何を選べるのかという問いが、現場の泥臭い葛藤とともに生々しく迫ってきますね。
善悪の物差しでは割り切れない人間の弱さと切実な祈りが最後まで丁寧に紡がれていて、読後もしばらく静かな余韻から少しの間抜け出せそうにない作品でした。
その節はお世話になりました。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!じわじわと、これ、他人事じゃないな……と思わせてくるホラー
最初は認知症の人も家族も安心して暮らせる理想の街の話なのかなと思ったんですが、読み進めるほど、その“理想”という言葉がだんだん怖くなってきます(゚Д゚)
幽霊や化け物が出てくる怖さじゃなくて、制度だったり、善意だったり、「本人のため」という言葉だったり。
現実にも普通にありそうなものが少しずつ歪んでいくので、むしろこっちの方が怖い。
介護する家族の苦しさ、本人の尊厳、自由、安全、社会がどこまで責任を持つのか。
どっちを選んでも何かを失うような問題がずっとついてきます。
読んでいる途中でそれは間違ってるだろと思ったはずなのに、別の立場から見ると簡単には否定できなくなったりして、自分の中の…続きを読む - ★★★ Excellent!!!これは心中ではない。最期の処方箋だ。
綺麗ごとが、いちばん怖い場所になる。
ネットに流れた脳外科医の「死の遺言ビデオ」。高級サナトリウムで、老医師は認知症の妻を抱きしめたまま息絶えていた。なぜ死を選んだのか。配信は介護、尊厳、生きることと終わることを社会に問う。数か月後、その問いは答えを得ないまま忘れられ、遺志を見届けたもう一人の医師が動きだす。
社会派サスペンスとしての骨格がはっきりしています。身体拘束ゼロを掲げる理想の施設、正しい言葉だけを積んだ現場、正義と現実がぶつかる心理戦。悪人がいないのに背中が冷える、という既存レビューの指摘がそのまま魅力です。善も悪も途中でひっくり返るので、読み手の経験によって見え方が変わる。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!人道、正義……『こうあるべき』を謳うことへの危うさを描く物語
ラベンダーの里という架空のサナトリウムを舞台にして、介護問題という現代日本の抱える闇を浮き彫りにしていくお話です。
もちろん同施設は架空の物なのですが、現実にあるのではないか?その施設を望む人たちが現実に存在するのではないか?と思わせるほど、施設を巡って自分の正義や思いを通そうとする、リアリティを持った登場人物たちの心理描写が、丁寧に描かれています。
誰もが通る道となる可能性が高い『介護する』、『介護される』という時。
ジャンルとしてはホラーだそうですが、エンタメという枠を超え、自身の、日本の未来について思いを馳せずにはいられなくなる……そんな深いテーマを持った作品です。