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概要
消えた七人、なのに尾は八本。九尾は一本足りない。」。
『九つの瀬を越えんとした者、狐に尾を喰われる』
『尾を喰われし者、二度と山を越えられず』
母は、その谷のことを、死ぬまで一度も話さなかった。本当の名も、生まれた場所も。残ったのは、薄紙にくるんだ一枚の児童画だけだ。山。赤い花。小さな白い狐。その後ろに、ずるりと伸びた七本の黒い尾。
子どもが、息を詰めて描いた線だった。|児童画解析士《じどうがかいせきし》の|真白奏《ましろかなで》には、それがわかる。描かれたものより、描かれなかったほうを読むのが、奏の仕事だ。
七本の尾は、同じ黒のはずなのに、一本ずつ、筆の押しつけ方が違った。七本目だけ、先がほどけるように薄くなって、その向こうへ、白い狐が走っていく。捕まえようとしているのか、逃がそうとしているのか。右上の大きな手の意味を、奏は子どもの
『尾を喰われし者、二度と山を越えられず』
母は、その谷のことを、死ぬまで一度も話さなかった。本当の名も、生まれた場所も。残ったのは、薄紙にくるんだ一枚の児童画だけだ。山。赤い花。小さな白い狐。その後ろに、ずるりと伸びた七本の黒い尾。
子どもが、息を詰めて描いた線だった。|児童画解析士《じどうがかいせきし》の|真白奏《ましろかなで》には、それがわかる。描かれたものより、描かれなかったほうを読むのが、奏の仕事だ。
七本の尾は、同じ黒のはずなのに、一本ずつ、筆の押しつけ方が違った。七本目だけ、先がほどけるように薄くなって、その向こうへ、白い狐が走っていく。捕まえようとしているのか、逃がそうとしているのか。右上の大きな手の意味を、奏は子どもの
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