大正11年の帝都を舞台に、神隠し事件に挑む宮守馨とその仲間たちを描いた物語です。
父の跡を継ぎ神社の宮司を務める馨は、子どものころに神隠しに遭った妹を見つけた経験から、周囲には“神隠しを解ける神主”として期待されています。しかし本人は、失踪の多くが事件や事故、本人の意思によるものだと考えているリアリスト。神隠し事件の調査に巻き込もうとする法医学助手・高麗にへきえきとしながらも、お金のためにはやむを得ないと話を聞くことにしたのだが、いつしか富豪の妻の失踪事件は、霊が見える同級生・結城をも巻き込んでいき……。
妹の神隠し事件を描いた冒頭描写が見事で、ぐっと世界に引き込まれます。また大正時代の風俗描写も丁寧になされており、読んでいるだけで当時の帝都の様子や空気感が伝わってきました。キャラクターたちも個性的で、主人公はもちろん、生活能力皆無の画家や、謎めいた雰囲気を纏う法医学助手など、彼らがどのような関係性で、ここからどのように話が進んでいくのかが気になります。探偵もの(心霊もの)の定番要素をちりばめながら、「この謎の真相を知りたい」という期待をしっかり煽ってくれるのもポイントになっています。
謎解きや時代背景、キャラクターの魅力に満ちた中、この事件がどのような結末になるのか、続きが楽しみです。