概要
あってほしかった。でもあってほしいからあるとは言えない。
壇ノ浦の春の海。御座船の奥に八歳の帝がいる。名もない女房は、その白い顔を見ながら、御所の庭で花びらを追わずにただ見送っていたあの子どものことを思う。同じ日の同じ海に、逃げる者と戦う者と、見送る者がいた。壇ノ浦三部作、ここに完結。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!万物、何処より来たりて又還る
壇ノ浦の戦いを、敗走する平家、それを追う
源氏、そして幼い帝を含む まさに
壇ノ浦の悲劇 をそれぞれの視点から描く
三部連作の最終作。
平家物語でも数々の琵琶法師に語られた
最も悲しみに満ちた場面を切り取る。
まだ幼い帝付きの名もなき女房。
彼女が語り手であるが、壇ノ浦の悲劇を
薄暗い御座船の室内での一幕。
帝というには余りにも幼い子供を、どこか
不思議そうに眺める視点と、過去に桜の
舞い落ちる花弁を只、見送る視点とが
交差する。
海の中にも都はある、と。
言い聞かされつつ入水する幼い帝。そして
乱暴にも引き戻された母の、建礼門院。
喧騒が、空白の静寂を創り出す。
桜の花弁が水…続きを読む