概要
「はじめまして」と、何度も言われた。
王都の外れで暮らす、名無しの少年。
彼は、旅の魔法使いと何度も出会っていた。
――そのはずだった。
けれど魔法使いは、会うたびに「はじめまして」と言う。
花には名前をつけるのに、少年のことだけは覚えない。
どれだけ話しても、どれだけ一緒に過ごしても、次に会えばまた初対面。
やがて少年は知る。
この世界では、名前を持たないものは記憶に残らないということを。
そして気づいてしまう。
自分の存在は、誰の記憶にも、記録にも、残らない――
それどころか、触れた痕跡さえも消えていくのだと。
それでも魔法使いは、なぜか同じ場所にやってくる。
何かを忘れているように。
「次に会ったら、必ず名前をつける」
その約束は、果たされなかった。
やがて少年は、自分自身の記憶すら失い始める。
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