『黒鉄の楽園』

綾戸 十亜夜

プロローグ 復讐の誓い

頭から血を流し、

背中の大きな三つの傷が目立つ、ある者は、

血に塗れた鉄の茨の前で誓った。

「復讐してやる。あの、人の姿をした

             悪魔どもに。」

その目は静まることのない怒りのせいか、

充血し、強く噛み締めるあまり、唇には血が滲んでいた。

血まみれの拳の中には、錆びついた銀色の鍵が握りしめられていた。


〜○月△日〜


「ようやく一匹目だ。」

全ての爪を剥がされ、全身の筋組織が露出した、人型のものを横目に呟く。

手慣れた手つきでそれを解体し、黒のポリ袋に無造作に投げ入れる。

爪を剥がすことさえ罪悪感で、できなかった自分が懐かしく思える。

それほどまでに自分の手は黒く染められてしまったのだ。もう後戻りなんかできない。

ここまで来るのに多くの物を失い過ぎた。友人に家族、そして人間としての誇りまでも。

だが、後悔はしていない。

俺はこれからも一筋の光も通らない、暗い闇の道を歩み続ける。復讐を果たすまで。

鞄からボロボロの手帳を取り出し、開く。 「俺もついに悪魔になってしまったのかもな。ま、こいつらに比べたら俺は小悪魔みたいなもんだけど。」

並べられた悪魔どもの写真の一枚に×印をつけながら自嘲する。

真っ赤な手袋を外し、鞄から一枚の手紙を取り出す。手紙には『狩野潔』という名前が書かれている。

「こいつには何の罪もないが、

俺の復讐の為の"刃"となってもらう。

死なせないよう努力はするがな。」

そして手紙を少し修正した。

俺は巻き込んでしまうことへの少しばかりの 謝罪として札束を手紙と一緒に

段ボールに詰め込んだ。

俺は一匹目の悪魔、○○○○○としてあの場所に乗り込む。

「待ってろよ、加奈。

 きっと見つけてやるからな。」

俺は薬指の欠けた手で拳を強く握った。



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『黒鉄の楽園』 綾戸 十亜夜 @Eq_xyzAka

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