第20話 作者のひとりごと 泥炭の味は?
泥炭を煎じて、口に含んでみたことがある。
スゲ類の泥炭は香りとしてはありなのだが、めっちゃ鉄臭いのと苦みが足りない。
香りに関しては代用コーヒーの使いどころとして十分。ミズゴケの泥炭は香りからして酸っぱい。
そのままコーヒーの代用として使うには無理があるが、煎じて蒸留し、ほかのコーヒー代替製品とブレンドすることにより、十分に代用コーヒーの質を高めうるものであるように思う。なにせ、ドングリやタンポポ、大麦などなど、代用コーヒーは概して苦みはあっても薫り高くはない。
泥炭の香りを使うというのはなんとも変な話と思われるかもしれないが、ウイスキーだってそうである。
初期製法として泥炭スモークを用いた、というのは勿論、ウイスキーの製法をもととしている。最近「アポカリプスホテル」でウイスキーに泥炭を使う話が割と大きく取り上げられたのは、記憶に新しい。
ところで、石炭紀ブレンドはかなり香りが独特なものになりそうである。
リンボク類の周皮を構成する物質はスベリン様ないしリグニン様の正体不明の物質だが、いずれにせよベンゼン環を非常に多く含むと思われ、現在のどの植物にも類似物が見当たらない。なにせ、リンボク類は周皮(外骨格性に高さ50mを支える周皮などもちろん類例があるわけがない)の占める比率が木部の4倍もある。要するに、現代に類例のない周皮の筒の中に木部が浮いているという話で、もちろん現在の木々や草に似たような化学組成があるとは想起しがたい状況なのだ。(筆者としては周皮を構成する物質は類縁関係からS-リグニンを含むG-リグニンが主体であろうと考えている∵イワヒバ類はそのような(わりかし特殊な)リグニン類により皮層を形成し、それが外骨格性に草体を支えるから。勿論、ほかの可能性もありうるが…まったく新しい物質をこのミズニラおよびイワヒバに近縁な小葉植物が持っていたと仮定するよりは無難な憶測だろう)
また、リンボク類が優占した石炭紀後期前半の石炭におけるイナーチナイト含有量の少なさは、石炭紀の高酸素環境にもかかわらずリンボク類の森が異常なほどの難燃性を持っていたことをあらわし、これもまた高濃度のリグニンないしスベリンなどの耐熱性物質によって達成されたとみられる。問題は――合成コストの高いこれらの分子を、リンボク類はいかに合成したのか、ということだ。
ところで製作中に「石炭紀の木々は折れやすかったので泥炭が堆積した」、という説をChatGPT5が吐いていたが、あまりはっきりした話ではない。McGheeの後期古生代氷河期本では想像たくましくも、リンボク類は成長の最終段階に急激に成長し、実はタンポポのように柔らかい草本状であったと書いているが。
ただ一つ言えることとして、多くの種で潜在的に30m以上に達するリンボク類の幹の太さは基部でも2m、先端部に至っては20~30㎝しかなく、極めて細身である(リンボク類の図は絵としておさまりが悪いことから、SDガンダムばりに圧縮されている)。したがって、柔らかく簡単に折れる――というものは、そう簡単にありうりそうにない。
「超時空ゲートのある世界」 @IV-7
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