エゴ。ナルシズム

白川津 中々

◾️

 いつまで経っても惰弱な精神は一向に改善されず、日々の中で絶えず胸が重く苦しい。


 殊更、人との付き合いで疲弊する。頭髪が白くなるくらいには歳を取ったのにも関わらず未だに心の通わせ方を知らず、自身に向く感情や思考を想像して「嫌われないようにしなくては」と他者に流される一方で、己の気に食わぬ物言いや態度には相応に無礼な振る舞いをしてしまうのだ。他者に依存している癖にエゴを抑制できない傲慢さ。そして、それを容認できない狭量さが自縛を強めていく。精神的における幼児性。成長の皆無。ナルシズムと他者依存の悪循環が混ざり合って発露し、言動に現れてしまう。発作のように、衝動のように。


 そんな姿を見て、ある者は怒り、ある者は哀れみ、ある者は去っていった。振る舞い方はそれぞれであったが、大きく傷付き、惨めになった。しかしそれは、その人達が感じたもの、心の動きそのものなのだ。人に与えたものが返ってきた、それだけの話なのである。


 人のいない場所で生きていくのが一番いいのだろう。しかしこの社会においてまったくの孤立は許されていないし、人がいないと生きていけない。近付けば傷付けてしまう、傷付いてしまうと理解しながら、一人ではいられない。昔から今まで、子供の頃から変質を拒み続ける弱い自分がずっと、ずっと、同じのままで、そこにいる。変わる事なく、澱のように。


 苦しみが、止まらない。

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