我が目を疑えるのは、幸福か、不幸か

「我が目を疑う」 慣用句です。目の前で起きていることを、見てしまったものの、信じたくないときに口に出して言うもので。

人が精神を病むとき、自分が見ているものが他人のそれとは違っていると気づかなくなります。気づかないうちに歪んだレンズが目の中に埋め込まれるかの如く、見たとしても確実な事実ではなくなっていきます。

ある人物は確実に病んでいました。別の人物は違和感を抱えています。

医学では自分が病気を抱えている自覚を「病識」(びょうしき)と呼びます。片方に病識はないでしょう。もう一方は病識があります。

しかし病識を得ても即座に症状が改善する訳ではありません。更には「死にたくならないなら病識を得ていない」と慎重に語られるほどに精神の病は悲惨な現実をもたらすことがあります。

我が目を疑う能力を持つほど病識を得て、なおかつ、病から抜け出せない現実。直視するべきか、逃避するべきか。

問いへの答えを導くために、本作を読んでみませんか。

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