露悪から枯れた境地に至れども。暗と明の強烈なコントラスト。

人魚の肉を食べると不老不死を得るという伝説は広く知られています。類似作品が多い題材を如何に「調理」するか。

冒頭の語りは醜悪そのもの。見せつけているのですから、まさしく、露悪。読者に禍々しさが突きつけられます。これは変だ。そう思わない人は居ないでしょう。

しかし途中から禍々しさが消えます。まるで枯れた境地に至ります。そこから先は、本レビューでは語りません。

暗と明の強烈なコントラスト。暗闇の中では周囲が克明に見え、日向では全てが朧気に見えるという逆理。その中で浮かび上がる、執念という情の暗翳。

短い作品ですが深く沈みましょう。そのときの息は? 貴方は人間? それとも人魚?

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