ある日の真夜中、主人公に一本の電話が入ります。 電話をかけてきたのは、彼の後輩。 取り乱した様子の彼は、同じ言葉を繰り返したり、話がまとまらず、なかなか本題に入ることが出来ません。 そんな中、はっきりと聞こえたのは「ひき逃げ」というとんでもない言葉。 主人公はすぐに後輩がいる神社へと急ぎます。 そこで主人公が後輩から聞いたのは、幼馴染二人と酔った勢いで神社の狛犬を引きずって道路に置き、ひき逃げさせるという行為で――。 若気の至りでは済まされない行為をした後輩たちに、後日どんな出来事が起こったのか。 ぜひその目で確かめてみて下さい。
狛犬は、神域を護る、いわば神の眷属。その起源は大陸の獅子像にさかのぼり、はるか彼方には古代メソポタミアのライオン像に至り、エジプトはギーザの大ピラミッドを護る大スフィンクス像とも同根、西の果てにすらライオン頭のドアノッカーとして残る存在。かくもひろく守護者として尊ばれたのも、その力強さと獰猛さゆえ。……その怒りを買ってしまったら……軽率な真似は控えた方がよさそうです。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(170文字)
余りにも衝撃的なタイトルにひかれて読み始めると、これが大変巧緻な怪談話。『類聚雑要抄』では「左獅子、於色黄口開、右胡麻犬、於白不開口、在角」とある、神社で見かける狛犬。二柱で一組にて神の御社を守護するもの。 即ち、神獣である。古くは木製であったというが、その殆どは石材で出来ている。つまり、ひき逃げなど出来ようものではない。 そう、出来ようものではないのだ。この作品の恐ろしいのは、ラストの衝撃。民俗学的なものを背景にした今風の輩話と思っていると……。 多くは語るまい。
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